研究課題
卵巣の加齢は、慢性の酸化ストレスが原因である。メラトニンは卵巣内で強力な抗酸化作用を発揮する。そこで、マウスを用い、思春期に相当する10週齢から更年期に相当する43週齢までの約8か月間にわたりメラトニンを長期間投与することによって、加齢による卵子の数の減少や卵子の質の低下を食い止めることができるかを検討した。メラトニン群にはメラトニン水(100μl/ml)を、対照群には水道水を飲水させた。13、23、33、43週齢でPMSG-HCGによる過排卵刺激を行い排卵数を計測した。対照群(33週:12.8個、43週:7.6個)、メラトニン群(33週:19.0個、43週:11.0個)とメラトニン投与で加齢による排卵数の減少が防がれた。43週での体外受精の受精率は、対照群(43.2%)、メラトニン群(56.6%)、胚盤胞到達率は、対照群(45.5%)、メラトニン群(66.0 %)、とメラトニン投与で加齢による受精率と胚盤胞到達率の低下が防がれた。卵巣組織内の原始卵胞を計測したところ、メラトニン群で有意に原始卵胞数、二次卵胞数、胞状卵胞数の増加が認められ、メラトニンは原始卵胞数の加齢に伴う減少を防いだ。次に、メラトニンの作用機序の解明のため、43週時の卵巣においてマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現の検討を行った。加齢に伴い発現が低下しメラトニン投与で発現が増加する遺伝子が78個同定され、多くは活性酸素消去に係わる遺伝子であった。さらに、加齢により体重は増加するが、メラトニン群ではその増加が抑制された。肝臓のメタボローム解析では、メラトニンにより脂質代謝、糖代謝が変化していた。また、メラトニンによりSIRTUN 遺伝子の発現が増加していた。つまり、メラトニンは、抗酸化作用だけでなく抗酸化酵素の誘導や、全身の臓器における代謝の変化なども介して卵巣加齢の抑制に関与する可能性が示された。
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