研究課題/領域番号 |
26670729
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
森 司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60241379)
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研究分担者 |
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Xenopus laevis / 捕食者誘導による恐怖ストレス / RNAseq / シグナル伝達 / 脳 |
研究実績の概要 |
オタマジャクシを用いて恐怖が脳に与える影響をRNAseqを用いて解析した。研究にはモデル生物であるアフリカツメガエル(Xenopus laevis)幼生を用いた。このX. laevisはサンショウウオ幼生と同所的に飼育すると尾部を伸長し、遊泳速度を速めた。そのため、このX.laevisは被捕食ストレスを認識して表現型の可塑性を示したことを意味する。そのため、この被捕食ストレスによりX.laevisの脳はどのような遺伝子発現をしているのかを解析することを目的にした。実験方法は2L水槽に50匹のX. laevis幼生(ST51)を入れ、10日間飼育したものをコントロールとした。収穫後、頭部を切断しRNAlaterに脳を浸漬してRNAを固定した。また、収穫6時間前に1匹のサンショウウオ幼生を添加し、全飼育期間を10日で収穫したものをEx6hrとした。同様に収穫24時間前に1匹のサンショウウオ幼生を添加し、脳のRNAを固定したものをEx24hrとした。また、10日間の飼育期間中、1匹のサンショウウオ幼生を添加して飼育し、その後脳を固定したものをEx10daysとした。更に、初期の5日間にサンショウウオ幼生を添加して飼育し、その後、サンショウウオ幼生を取り除いて5日間飼育した群を5dayOutとした。実験はすべて3群で行い、脳からのRNAでRNAseqを行い、被捕食ストレスを受けたX.laevisの脳で発現する2千万個の発現遺伝子をBlastX解析した。しかし、個々の遺伝子から脳内を鳥瞰することは困難なため、発現遺伝子からのシグナル伝達を調べるために、IPA解析を行った。その結果、多くのシグナル伝達が短時間で変化する事が明らかになり、ストレスを抜いてもPTSDの反応の遺伝子群が検出された。そのため、カエル幼生を用いた恐怖ストレスが哺乳類にも利用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期に検討していた実験項目には現技術では困難な点が有る為、すこし視点を変えて、直接脳内の遺伝子プロファイルを調べる事にした。それも、遺伝子データーが揃い、かつヒトの病気の遺伝子の79%を持つXenopus属を用いることで、恐怖刺激における基本データーを得ることが出来る。今回は様々な実験条件を策定して脳内遺伝子の発現プロフィールを得ることが出来た。 更に、エゾアカガエル幼生は捕食者に応じて、その適応戦略を変えることが明らかになっている。そのため、サンショウウオやヤゴなど異なった捕食者に対して脳内遺伝子の発現パターンの変化の有無を明らかにするために、両捕食者に暴露されたエゾアカガエル幼生の脳からRNA抽出し、RNAseqを行った。現在、解析中です。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、エゾアカガエル幼生の脳からのRNAを用いてサンショウウオやヤゴなど異なった捕食者に対して脳内遺伝子の発現パターンの変化の有無を明らかにするために、両捕食者に暴露されたエゾアカガエル幼生の脳内遺伝子のRNAseqを行っているため、今年度はこの遺伝子の発現プロファイリングから脳内に何が起きているのかを組織学的な手法も用いて、それらを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子の大規模解析を行う予定であったが、カエル幼生の状態が良くなかったことと、捕食者が成長し過ぎたため、解析を次年度に持ちこした。
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次年度使用額の使用計画 |
大規模シークエンスの解析を2セット加える予定である。
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