研究課題
平成26年度はBRCA1 欠損下にエストロゲンによってもたらされるゲノムおよびエピゲノムの変化とその分子機構を解析するためのBRCA1 欠損エストロゲンレセプター(ER) 陽性diploid ヒト細胞の樹立を試みた。まず、ROCK阻害剤を用いて手術検体の乳腺上皮、卵管上皮からの不死化細胞を作成したところ、初期にはER陽性のクローンを得ることができたがこの発現は不死化にともなうepithelial-mesenchymal transition により消失してしまうことが判明した。そこで、レンチウィルスベクターを用いて既存のER陰性のヒト乳腺diploid細胞株MCF10Aよりdoxycyclin誘導性にBRCA1にたいするshRNA (shBRCA1)と同時にERを発現する安定細胞株を作成した。コントロールとしてshBRCA1のみを発現する細胞、ERのみを発現する細胞を作成し、それぞれのBRCA1抑制効率、ER発現効率が同等となるようなクローンの選択、doxycyclinの投与期間、投与量を設定した。この細胞を用いてBRCA1 欠損とER発現の作用を解析したところ、おもしろいことに1週間のdoxycyclin添加時の細胞数がER発現細胞は親株のMCF10Aと同等、BRCA1 欠損細胞は70-80%程度に低下したのに対して、ER発現BRCA1 欠損細胞はほとんどが死滅した。さらにER発現BRCA1 欠損細胞はdoxycyclin添加後3日ほどから多核化などの核の異常が同定された。
2: おおむね順調に進展している
新鮮検体からの乳腺上皮、卵管上皮からのBRCA1 欠損ER陽性diploid ヒト細胞の樹立はできなかったものの、それに代わる解析のツールを得ることができた。また、すでに予想される表現型の一部を得ることができた。下記に示す次世代シーケンサー、染色体解析、Micrococcal nuclease assayやR-loop同定のためのEGFP-RNaseH1コンストラクトなど、解析のための準備もできており、おおむね順調と評価した。
MCF10A細胞に上述のdoxyxyclin誘導性ER発現細胞、BRCA1 欠損細胞およびER発現BRCA1 欠損細胞を用いて以下の解析を行う。① doxyxyclin誘導後の経時的なDNA損傷の蓄積を核型解析(G-band)にて行う。② BRCA1 欠損時にERの転写に伴うR-loopの蓄積をEGFP-RNaseH1を用いた蛍光免疫染色法およびフローサイトメトリーにて解析する。③ クロマチン凝集の変化をMicrococcal nuclease assayにて解析する。④ BRCA1 欠損ER発現による新たな変異の導入をIon-Trent Personal Genome Machineを用いた次世代シーケンサーにて解析する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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http://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/index.html