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2014 年度 実施状況報告書

メスとオスの液性因子に制御される精子の生存機構

研究課題

研究課題/領域番号 26670732
研究機関独立行政法人国立成育医療研究センター

研究代表者

河野 菜摘子  独立行政法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 研究員 (00451691)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード体内受精の免疫 / 補体 / 精漿タンパク質 / 性周期
研究実績の概要

本研究の申請段階では、子宮内の精子に障害をもたらす因子はプロジェステロンまたはその派生物と考えていた。しかし子宮内液中にステロイド骨格を持つ因子を網羅的に調べても精子を殺す作用を持つ因子は検出されなかった。そこで視点を変えて、子宮内でSVS2非存在時の精子細胞膜の破壊のされ方に注目した。子宮内において精子は細胞膜・核膜ともに破壊されていたが、完全に膜を欠失したものは少なく、比較的小さい穴が開いているものが多かった。このような穴のあけ方をする因子の一つに補体がある。そこで一般的に補体が失活するとされる56℃で30分間、子宮内液を処理したものを精子に作用させた。その結果、精子を殺す作用は失活することが明らかとなった。この結果から、子宮内の殺精子因子は補体関連因子ではないかと予測した。
補体シグナルは複雑かつ関連する因子が多いことで有名である。そこで、多くの抗体を用いて補体を検出するよりも子宮内液に含まれるタンパク質を網羅的に同定することにした。その結果、子宮内液にもっとも多く含まれていたタンパク質は補体C3であることが判明した。その他にも補体関連因子やIgGなどシグナルに関連する因子が多く同定された。一般的に補体シグナルが活性化して抗原の細胞膜を破壊するまでに必要な因子の上流はほぼ子宮内液に含まれていることが分かったが、一方で、実際に細胞膜に穴をあける因子(C6,C7,C8,C9)は検出されなかった。
補体C3が殺精子因子として機能しているかどうか確認するために、抗体を用いて免疫除去した子宮内液を精子に作用させたところ、殺精子効果は減弱することが明らかとなった。しかし一方で、精子を殺す状況下でC3は活性化していないことも判明した。これらの結果から、子宮内液に存在するC3が殺精子因子である可能性は高いが、その作用機序は通常の免疫機構とは異なる可能性があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予想としては、子宮内のステロイド骨格を持つ因子が精子を殺す作用があると考えていたが、そのような因子は見つけることが出来なかった。しかし発想の転換により、その他の可能性のある候補因子を見つけるに至った。
この候補因子は非常に有名な免疫関連因子であり、既に欠損マウスの報告がなされているが、顕著な表現型がないことでも有名である。しかし、私が解析している精嚢タンパク質SVS2を欠損した雄マウスと交尾した場合には表現型が出るのではないかと予想しており、その場合には、生殖と免疫をつなぐ新しい研究分野の創設につながるのではないかと期待している。

今後の研究の推進方策

次年度は、子宮内の候補因子を確実なものとして同定し、更にはどのような作用機序で子宮内精子を攻撃しているのか、詳細に解析していく予定である。
また、因子が同定できた場合には、ヒトにおいてもその因子の発言があるか確認し、さらに不妊傾向のある患者においてその量がどうなっているか、調べたいと思っている。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 3.Seminal Vesicle Secretion 2 Acts as a Protectant of Sperm Sterols and Prevents Ectopic Sperm Capacitation in Mice.2014

    • 著者名/発表者名
      N Araki, G Trencsenyi, ZT Krasznai, E Nizsaloczki, A Sakamoto, N Kawano, K Miyado, K Yoshida, M Yoshida.
    • 雑誌名

      Biology of Reproduction

      巻: 114 ページ: 120642

    • DOI

      doi: 10.1095/biolreprod.114.120642.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 4.Mitochondrial fission factor Drp1 maintains oocyte quality via dynamic rearrangement of multiple organelles.2014

    • 著者名/発表者名
      Udagawa O., Ishihara T., Maeda M., Matsunaga Y., Tsukamoto S., Kawano N., Miyado K., Shitara H., Yokota S., Nomura M., Mihara K., Mizushima N., Ishihara N.
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 24(20) ページ: 2451-2458

    • DOI

      doi: 10.1016/j.cub.2014.08.060.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 5.Absence of CD9 reduces endometrial VEGF secretion and impairs uterine repair after parturition.2014

    • 著者名/発表者名
      N Kawano, K Miyado, N Yoshii, S Kanai, H Saito, M Miyado, N Inagaki, Y Odawara, T Hamatani, A Umezawa.
    • 雑誌名

      Scientific reports

      巻: 4

    • DOI

      doi: 10.1038/srep04701.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 6.Seminal vesicle protein SVS2 is required for sperm survival in the uterus.2014

    • 著者名/発表者名
      Kawano, N Araki, K Yoshida, T Hibino, N Ohnami, M Makino, S Kanai, H Hasuwa, M Yoshida, K Miyado, A Umezawa.
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 111(11) ページ: 4145-4150

    • DOI

      doi: 10.1073/pnas.1320715111.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 7.Role of CD9 in Sperm–Egg Fusion and Virus-Induced Cell Fusion in Mammals.2014

    • 著者名/発表者名
      K Yoshida, N Kawano, Y Harada, K Miyado
    • 雑誌名

      Sexual Reproduction in Animals and Plants

      巻: なし ページ: 383-391

    • 査読あり
  • [学会発表] マウス精嚢タンパク質SVS2の 雌性生殖器内での働き2014

    • 著者名/発表者名
      河野 菜摘子、荒木 直也、吉田 薫、吉田 学、宮戸 健二
    • 学会等名
      第46回 精子研究会
    • 発表場所
      東京医科大学病院
    • 年月日
      2014-12-13 – 2014-12-13
    • 招待講演
  • [学会発表] 精漿タンパク質SVS2を用いたメス生殖器におけるマウス精子のサバイバル術2014

    • 著者名/発表者名
      河野 菜摘子、荒木 直也、吉田 薫、吉田 学、宮戸 健二
    • 学会等名
      第33回 日本動物行動学会
    • 発表場所
      長崎大学
    • 年月日
      2014-11-01 – 2014-11-02
    • 招待講演
  • [学会発表] メス生殖器における精子サバイバル術2014

    • 著者名/発表者名
      河野 菜摘子、荒木 直也、吉田 薫、吉田 学、宮戸 健二
    • 学会等名
      第85回 日本動物学会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
    • 招待講演
  • [学会発表] Seminal vesicle protein SVS2 is required for sperm survival in the uterus2014

    • 著者名/発表者名
      Natsuko Kawano, Naoya Araki, Kaoru Yoshida, Manabu Yoshida, and Kenji Miyado
    • 学会等名
      第12回 国際精子学会
    • 発表場所
      オーストラリア・ニューキャッスル
    • 年月日
      2014-08-10 – 2014-08-14
  • [学会発表] 新たに見つかった子宮内での精子保護機構2014

    • 著者名/発表者名
      河野 菜摘子、荒木 直也、吉田 薫、吉田 学、宮戸 健二
    • 学会等名
      日本アンドロロジー学会第33回学術大会
    • 発表場所
      軽井沢
    • 年月日
      2014-06-12 – 2014-06-13
  • [備考] 新たに見つかった子宮内での精子選抜機構 - 国立成育医療研究センター

    • URL

      www.ncchd.go.jp/center/information/topic/images/topic1403-1.pdf

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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