研究課題/領域番号 |
26670733
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
宮戸 健二 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (60324844)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子宮内膜 / 受精 / 再構築 / CD9 / エキソソーム / テトラスパニン / VEGF / 内分泌 |
研究実績の概要 |
生殖機能を維持するためには、配偶子形成だけでなく、周期的な子宮内膜の再構築が必須である。そのメカニズムは内分泌系によって調節されるが未解明の部分が多い。我々が着目したのはエキソソームと呼ばれる細胞間の膜輸送に関わる膜構造体で、しかも通常の2重脂質層が明瞭なベシクル型ではなく、我々の研究から明らかになったマトリックス型エキソソームである。申請者が行った今までの研究から、膜4回貫通型蛋白質CD9が雌の生殖機能、特に卵と精子の膜融合過程に必須であることを見出した。さらに、CD9は卵型エキソソーム(マトリックス型)の構成成分として卵から放出されることも明らかにした。マトリックス型エキソソームは従来の細胞間の物質輸送に関わるエキソソーム(ベシクル型)とは構造が全く異なる。すなわち、マトリックス型エキソソームでは明瞭な2重脂質層が形成されず、小さなユニットが集合した形態を呈している。さらにその後の研究から、マトリックス型エキソソームは、子宮内膜上皮からも分泌され、子宮内膜の周期的な再構築に関与するという新たな知見が得られた。本研究では、卵型エキソソームを介した女性生殖器官における組織再構築の分子メカニズムを解明し、子宮内膜を修復および再構築させる治療方法を開発することを最終目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
女性の生殖系、特に子宮内膜の再構築において、様々な因子の関与が報告されてきた。それらの機能は多岐に渡っているため、内分泌系との関連を含めた子宮内膜再構築の全体像を理解することが極めて困難である。その中でも血管内皮細胞増殖因子(以下、VEGF-A)は血管新生を司るサイトカインで、子宮内膜の再構築に中心的な役割を果たしていると考えられている。我々の最近の研究から、不妊症患者の子宮内液中のCD9の量が有意に低下するという結果が得られた。さらに、子宮内膜上皮からマトリックス型エキソソームと共にVEGF-Aが放出されることが明らかになった。また、CD9欠損マウスでは、受精の膜融合異常の他に、子宮内膜再構築にも異常が認められ、産仔の小型化といった異常が認められた。さらに、VEGF-Aをセファロースビースに吸着させて子宮内腔に注入したところ、出産直後のCD9欠損マウスでも子宮内膜が再構築された。以上の結果から、VEGF-Aが、血管新生ではなく、子宮内膜上皮の再生に直接関与していることが示唆された。今後は、マトリックス型エキソソームの形成とVEGF-A放出を制御する分子メカニズムの解明とともに、VEGF-Aの子宮内腔への導入方法についても検討を行い、生殖医療への貢献をめざした研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
国立成育医療研究センター・細胞医療研究部(宮戸)の研究グループを、不妊診療科(齊藤)、慶應義塾大学・医学部・産婦人科(浜谷)がサポートする研究体制をより一層強化することにより、女性の生殖機能におけるエキソソームの役割、その分泌機構を明らかにすることをめざす。基礎と診療の協力体制によって、モデル動物を用いて得られた研究成果を子宮内膜上皮の再構築法の開発につなげる流れを維持、強化する。それぞれの得意とする分野を生かし、複数の研究グループが連携することにより、より多くの情報、研究結果を得ることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年4月に移動費が発生する可能性が生じたため、移動費として7,273円の繰り越し金額を設定した。
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次年度使用額の使用計画 |
移動費に充当する。移動費が発生しなかった場合には消耗品として適切に使用する。
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