研究課題
放射線治療は頭頸部癌の治療において確立された効果的な治療法であり、その果たす役割は非常に大きい。放射線照射によって癌細胞は細胞死を生じるが、一部の癌細胞では放射線照射による癌の細胞死によって、細胞表面に免疫刺激分子の発現増強や、免疫シグナル分子の放出をきたし抗腫瘍免疫応答を刺激するimmunogenic cell death (ICD)を起こすと言われている。今回、頭頸部扁平上皮癌に対してX線と新しい放射線治療である重粒子線によるICDの違いについての検討を行う。今年度は、まずX線照射によるICDについて検討した。頭頸部扁平上皮癌細胞株Gun-1(下咽頭癌由来)とHSC-3(舌癌由来)に対してX線を10Gy照射し、72時間後にアポトーシス誘導とCalreticulinの発現を検討した。また、免疫関連分子として、HLA class I, DR, B7 family, CD47の分子の発現変化についてフローサイトメトリーにて解析した。予想通り、両細胞株ともアポトーシスを生じていた。Gun-1においてCalreticulinの発現の増強を認めた。またHLA class Iの発現低下、CD47分子の弱い発現低下を認めた。HSC-3においては、Calreticulinのわずかな増強とHLA class I、B7H1、CD47分子の発現低下を認めた。X線照射にてICDを生じている可能性が高いが、免疫学的変化は細胞株による違いがあると思われる。更にCD47分子の発現低下やB7H1分子の低下は、monocytesへの貪食促進やT細胞抑制の解除などの可能性が示唆された。照射のdoseやアッセイまでの時間設定など条件を変えての検討を進めているところである。
3: やや遅れている
頭頸部扁平上皮癌細胞株に対するX線照射によりCalreticulinの発現上昇がみられたことは、Immunogenic cell deathが生じていることであり、加えて免疫関連分子の発現変化も認められた。しかしながら、これら分子の発現には細胞株間による差が認められた。今後は、どの細胞株を使い、どのような照射条件で研究を進めていくかといった条件設定に時間を要すると思われる。
今年度中にX線照射による実験を繰り返し行いながら、線量設定や照射後の時間について条件設定を行なう一方、HMGB1の測定、免疫細胞染色、樹状細胞あるいは単球への貪食作用の変化を調べていく。X線照射で設定された条件を用いて重粒子線による実験へと移行していく。
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