研究課題
放射線治療は頭頸部扁平上皮癌の治療として確立された治療法であり、手術とともにその果たす役割は非常に大きい。また、近年は粒子線治療も開発が進んでおり、頭頸部非扁平上皮癌に対して当院でも臨床試験が行われている。X線、粒子線ともに癌細胞に作用して細胞死を誘導するが、それだけにとどまらず、一部の癌細胞では細胞死によって、免疫刺激分子の発現や免疫シグナル分子の放出をきたすことが明らかになってきた。放射線照射による癌細胞死はがん微小環境にも様々な影響を及ぼし、間質細胞との相互関係によって環境を変化させると考えられる。これまでに頭頸部扁平上皮癌細胞株に対して、X線や重粒子線を照射し、アポトーシス誘導能やcalreticulin発現の増強などを評価してきた。重粒子はX線と比較して高い殺細胞効果(アポトーシス誘導能)を認めた。更に放射線照射によって細胞株による相違はあるが、一部の細胞株ではHLA class I、B7H1、CD47などの発現の変化が認められた。今年度は更に、アデノシン代謝に関与するCD39とCD73について放射線照射による影響を検討した。今回検討した細胞株にはCD39の発現は認めなかった。一方、CD73は両細胞株とも高発現していたが、放射線照射によるCD73発現の変動は認めなかった。癌細胞はCD39/CD73を介してアデノシン代謝に関与し免疫を抑制すると言われ、低酸素状態はCD73を誘導することなどが知られているが、放射線の直接作用による発現の制御はなかった。
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