頭頸部癌におけるキードラッグはシスプラチンである。しかし、シスプラチンは骨浸潤した癌に対しては抗腫瘍効果が低く、またその腎毒性が高いことが臨床的には問題である。 こうした点を克服するべく金沢大学薬学部にて新規開発された次世代プラチナ製剤である電荷型白金抗癌剤(カチオン型シスプラチンとアニオン型シスプラチン)による頭頸部癌新規治療戦略開発を目的とし、下記のごとく研究を施行した。 ①in vitro:抗腫瘍効果 頭頸部癌細胞株OSC-19、OSC-20対して、新規2剤と従来のシスプラチンを添加し、MTT assayにてin vitroにおける抗腫瘍効果を比較した。IC50値は新規2剤が従来薬と比し高い結果となっており、従来薬よりもin vitroでの活性が高いことが示された。 ②in vivo:抗腫瘍効果 ヌードマウス背部皮下にOSC-19移植し担癌マウスを作成し、薬剤投与したところアニオン型シスプラチンはシスプラチンとほぼ同等の抗腫瘍効果をしめした。さらに腎機能についてはアニオン型シスプラチンは腎機能障害の軽減作用が認められた。 ③骨浸潤モデルマウスの作成 ヌードマウス咬筋にOSC-19を筋肉内注射し、骨浸潤を伴うモデルマウスを作成した。マウスCTを用いてそれを撮影した。コントロール群に比べて、シスプラチンは一定の抗腫瘍効果を示したが、アニオン型シスプラチンはシスプラチンよりも高い抗腫瘍効果を示した。 以上から、アニオン型シスプラチンは従来のシスプラチンに比べて一般的な抗腫瘍効果は同定であるが、腎毒性は低く、また骨浸潤した癌には高い抗腫瘍効果を示すことがわかった。
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