研究課題/領域番号 |
26670746
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
氷見 徹夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90181114)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ウイルス感染 / RSウイルス / 上皮細胞 / インターフェロン / microRNA / ウイルス持続感染 |
研究実績の概要 |
ウイルス受容体のうち,TLR3の刺激による鼻粘膜の変化を観察し,ウイルスに対する防御機構を検討継続した.この研究では,物質透過性に関するタイト結合分子の動きをmicroRNAや薬剤を作用させることで,ウイルスに対するバリア機構について検討した. インターフェロンによるウイルス自然除去因子の検討では,まずターゲットとしてすでに確立された鼻粘膜上皮を用いた感染系を使用したが,ウイルスの排除機構を定量的に測定する有効な方法を模索中であり,この点が最も研究の遅れに関与している. それに代わり,小児の鼻汁を用いたウイルスの起動からの除去に関与する遺伝子解析を行うため,倫理委員会へプロトコールを提出中である.許可が得られれば,実際の臨床検体を用いたウイルスと宿主細胞の相互作用について検討する.次に,RSウイルスの重症化を予測するためのバイオマーカーとしてmicroRNAの役割について検討中である.まだプレリミナリーであるが,本年度の学会にて発表予定である. インターフェロンに関しては,ウイルスの持続感染系を用いて,その際の上皮細胞でのIFN誘導経路の抑制について検討を進める.ウイルスがなぜ持続感染できるのかを解明することで,ウイルスの自然除去因子の解明につながると予測している. また実際に使用されている薬剤がウイルス感染時に抑制的に働くものをスクリーニング中である.この研究の応用として,IFN産生系にどのように作用しウイルスを除去する際の作用点について検討を進めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
λインターフェロンサブタイプに対する抗体にはばらつきがあり,抑制実験などのサブタイプごとの差異がうまく再現できない.産生の測定としてのキットはサブタイプごとのものが作成できているため,手法として持続感染系(主に麻疹ウイルスとムンプスウイルス)でのλインターフェロンサブタイプの動態を測定することとした.すでに感染系が確立している系は細胞株であるため,鼻粘膜上皮の初代培養系で同様の持続感染系の確立に努めている.この系が確立できれば大幅に研究が進むことが予想される.臨床的な見地からの解析は順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,安定的な鼻粘膜上皮細胞のウイルス持続感染系の確立を最優先する.細胞株を用いた系は完成しているので,実際の気道上皮を用いた検討に移行する.しかし並行してBEAS2B細胞株のような気道系の株を用いた基礎実験も並行して行う. 前述のように,細胞株ではウイルスの持続感染系が出来上がっているが,これらの細胞株ではIFN産生系が正常と若干異なるため,本来の目的であるウイルス自然除去因子の探索には不向きであると考えられる.初代培養系での持続感染系の確立までは,siRNAやノックインなどの手法を用いてλIFNサブタイプのウイルス感染時の抑制状態あるいはウイルス排出機構についての検討を続ける.
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費や英文校正費,投稿料などには支出せず,消耗品のみに支出したため,これらの費用が残額として残った.さらに,初代培養系に必要な特殊な培養液が高額であるが,この系がまだ完成していないため,使用量が少なかったためと考えられる.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は消耗品の内,初代培養系の持続感染系が確立した際の培養液の支出としておもに充てる予定である.さらに,臨床的検討としての小児の遺伝子解析とマイクロアレイの購入量としても支出予定である.
|