研究課題/領域番号 |
26670748
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小川 郁 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00169179)
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研究分担者 |
水足 邦雄 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (40338140)
藤岡 正人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70398626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 感音難聴 / iPS細胞 / 創薬研究 / 薬剤スクリーニング |
研究実績の概要 |
内耳は側頭骨の奥深くに位置し、その採取によって難聴を引き起こすため、ヒト内耳細胞を用いた研究は技術的困難からこれまで行われてきてこなかった。そのため試験管内でヒト内耳細胞を調整して用いる系の樹立とその応用には、過去にないさまざまなブレイクスルーをもたらすポテンシャルがあるものと考えられる。 本研究では、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)/人工多能幹細胞(iPS細胞)から効率的に誘導した内耳耳胞様細胞を用いてヒト内耳細胞(感覚上皮前駆細胞、有毛細胞、内リンパ嚢細胞)をin vitroで大量調整し、創薬に直結する薬剤スクリーニング系の樹立をめざし、その最初の試みとして有毛細胞分化誘導剤の薬剤スクリーニングを検討する。 平成26年度の研究で、ヒトiPS細胞3系統、ES細胞2系統から極めて効率のよい内耳耳胞様細胞誘導系と、各種蝸牛細胞(外有毛細胞様細胞、神経節細胞様細胞、外らせん溝細胞様細胞、血管条辺縁細胞様細胞、血管条基底細胞様細胞、1型~5型蝸牛外側壁線維細胞様細胞)を効率よく樹立する系を樹立した。また当初の計画ではコルチ器の感覚上皮細胞のみをレポーター遺伝子を用いて単離することを予定していたが、分化誘導系の詳細な検討により、ほぼ有毛細胞のみから構成されるotosphere(いわゆるhalo sphere)の作製系を確立した。 薬剤スクリーニングについては分化誘導を調整する複数の因子と、細胞死や細胞内の現象を調節する複数の既存の化合物を用いて検討を行い、分化誘導効率や細胞死数の変化を確認している。今後この系を用いてさらに多くの薬剤の効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は感覚上皮前駆細胞をレポーター遺伝子の導入でsortingすることを計画していたが、H26年度の分化誘導法のさらなる検討で、レポーターを用いずとも高効率に感覚上皮細胞、ないし有毛細胞を誘導する方法を確立することに成功した。すでにリード化合物となり得る少数の化合物をこの実験系で検討し、有毛細胞、支持細胞、神経節細胞の誘導効率に変化が出ることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は上述の実験系に薬剤ライブラリを用い、創薬スクリーニングへの有用性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分化誘導に関する新規技術を樹立したことにより、当初予定したFACS sortingによる煩雑な実験系を回避することができた。そのため計上していた費用分を用いなかった
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の薬剤スクリーニングの規模を拡大し、予定よりもすぐれた結果を目指す
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