研究課題/領域番号 |
26670750
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
富田 浩史 岩手大学, 工学部, 教授 (40302088)
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研究分担者 |
菅野 江里子 岩手大学, 工学部, 准教授 (70375210)
田端 希多子 岩手大学, 工学部, その他 (80714576)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / 視覚誘発電位 / チャネルロドプシン / 網膜色素変性症 |
研究実績の概要 |
チャネルロドプシン-2(ChR2)タンパク質は光受容に伴い陽イオンを透過させる光活性化陽イオンチャネルとして機能し、視細胞の変性により失明したラットの神経節細胞に導入することにより視覚機能を回復できる。しかし、この視覚システムは正常な網膜のそれと大きく異なる。ChR2と同様に古細菌型ロドプシンに分類されるハロロドプシンは、光活性化クロライドチャネルとして機能し、ハロロドプシン(NpHR)を遺伝子導入することによって、光照射によって神経細胞の興奮を抑制することが可能である。本研究ではChR2とNpHRを異なるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの血清型を利用して、遺伝盲ラットの網膜細胞に導入し、ON型、OFF型の機能を模倣する神経節細胞を新たに創出することを試みる。 平成26年度は、血清型およびプロモーターの異なるAAVベクターを作製し(AAV2/2-CAG, AAV5/2-CAG, AAV-DJ-CAG)、NpHR遺伝子をラット網膜に導入した。最も導入効率が高いと期待されるAAV2/2-CAGで網膜神経節細胞にNpHR遺伝子の発現が確認されたものの、NpHRの機能であるOFF反応を見出すことは出来なかった。NpHRは、細胞膜に加えて、その大半は細胞質に顆粒状に認められ、充分な機能を発揮できていない可能性が示された。また、培養細胞にNpHR遺伝子を導入し、パッチクランプ法により光刺激に伴う膜電流を測定した結果、ChR2に比べ、その膜電流は1/10程度であり、NpHRの細胞内局在が充分に機能しない要因であることが強く示された。現在、NpHRタンパク質を細胞膜に局在化させるために、NpHRの遺伝子改変を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた種々の血清型、プロモーターを持つAAVベクターに加えて、新規に市販されたAAV-DJを作製した。これら全てについて、導入効率を算出するに至っていないものの、AAV2/2-CAGでは高い導入効率が得られ、次年度予定していた視覚誘発電位測定に至っている。このように、順調に計画が進行しているものの、その一方で、NpHRの機能面で問題を生じている。急遽、培養細胞を用いてパッチクランプ法により、光電流を測定した結果、陽イオンチャネルとして機能するChR2に比べ、その反応性が極端に低いことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
ChR2と波長感受性の異なるボルボックス由来ChR1は、NpHRと同様に、細胞膜に局在せず、その反応性は極端に低く、充分機能しないものであった。我々は、mVChR1の遺伝子改変を行い、細胞膜に局在するmVChR1を作製することに成功している。mVChR1と同様の手法を用いて、NpHR遺伝子を改変し、膜に局在化するNpHRを作製する。 遺伝子改変と並行して、反応性の低いNpHRであっても、細胞種特異的に導入することによって、OFF反応を誘発できる可能性があるため、細胞特異的プロモーターを用いて、特定の細胞にNpHRを導入し、視覚誘発電位を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の計画通りに進んだものの、遺伝子自身の機能が不十分で、高機能化するために遺伝子の改変が必要となった。このため、動物実験を中断し、改変した遺伝子の機能を確認するために、培養細胞を用いた実験を行ったため、動物実験の費用を来年度に持ち越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
有用な改変型遺伝子が作製され次第、動物実験を行い、in vivoでその効果を検証する予定である。
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