研究課題/領域番号 |
26670760
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小泉 範子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20373087)
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研究分担者 |
奥村 直毅 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (10581499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 角膜内皮細胞 / 再生医療 / 細胞外マトリクス / ラミニン / インテグリン |
研究実績の概要 |
角膜の透明性維持に重要な役割を果たす角膜内皮細胞は、生体内における増殖能が乏しいため、広範囲に障害されると水疱性角膜症となり重症の視力障害をきたす。我々は、角膜内皮再生医療の開発に取り組み、2013年12月から角膜内皮細胞注入治療のFirst-in-man臨床研究を開始した。本研究では再生医療の実現に向けた重要な課題である角膜内皮細胞老化の分子機構の解明を目指した研究を行っている。 本年度はヒト角膜内皮基底膜および角膜内皮に発現するラミニンのアイソフォームの発現を検討し、発現が確認されたアイソフォームの培養基質としての有用性を検討した。ヒト角膜内皮ではラミニンα5、β1、β2、β3、γ1、γ2が発現しており、ヒト角膜内皮細胞の接着は、培養皿をラミニン511、521でコーティングすることで非コーティングのコントロールと比べ151.3±3.8%、153.1±3.1%と有意に促進された。BrdUの取り込み率はラミニン511、521において261.9±5.1%、324.0±3.6%と有意に促進された。一方で角膜内皮に発現していないラミニン211を用いた場合には、細胞接着、増殖ともに抑制された。さらに、ラミニンに結合するインテグリンの角膜内皮における発現を解析したところ、ヒト角膜内皮細胞にはインテグリンα1、α2、α3、α6、αv、β1の発現が確認され、インテグリン (α3β1、α6β1)の中和抗体により培養ヒト角膜内皮細胞の接着、進展は有意に抑制された。以上のことより角膜内皮細胞はインテグリンを介して特定の細胞外マトリックスと結合することで細胞接着などの細胞現象を決定していることが示唆され、ラミニン511、521などの特定のラミニン分子を用いることで細胞機能を制御し、効率の高い角膜内皮細胞培養が可能であることが示された。上記の成果はInvest Ophthalmol Vis Sciに掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度計画の項目1「角膜内皮基底膜に発現するラミニンのアイソフォームの発現解析」を終了し、平成27年度に計画していた項目3「ラミニンの細胞老化制御メカニズムの解明」にも着手し、角膜内皮に発現するラミニンのアイソフォームの細胞老化、細胞増殖、細胞接着への影響を検討した。項目2の「角膜内皮細胞の細胞老化における制御因子の網羅的解析」に関しても現在解析中であることから、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通りに進める予定である。具体的には、平成27年度計画の項目3を完了し、項目4「細胞老化制御を可能とする培養法の開発」では我々が同定した角膜内皮細胞培養に最適なラミニンのアイソフォームの機能性フラグメントを作成し、動物由来成分を含まない培養基質を用いたヒト角膜内皮細胞培養プロトコールを作成する。さらに角膜内皮機能不全の動物モデルを用いた細胞注入治療の前臨床試験を計画している。
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