研究課題/領域番号 |
26670768
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
館 正弘 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50312004)
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研究分担者 |
菅野 恵美 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10431595)
武田 睦 東北大学, 大学病院, 助教 (30333800)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 創傷治癒学 / MRSA感染制御 |
研究実績の概要 |
慢性創傷における多剤耐性菌の感染は年々深刻さを増し、新たな観点からの感染制御策が求められている。新たな対策として、申請者は菌をもって菌を制する可能性に着目している。緑膿菌がMRSAなどほかの菌種に対して抗菌作用を示すことはふるくから知られていたが、緑膿菌自体の毒性・病原性の観点から臨床応用には至っていない。 本研究では抗MRSA対策として、好中球やマクロファージの免疫応答を活性化する緑膿菌クオラムセンシング(QS)分子に注目した。これまで、緑膿菌QS分子がMRSA感染制御、創傷治癒過程に果たす役割は報告されていない。 本年はMRSAの増殖抑制に対する緑膿菌QS分子(3-oxo-C12-HSL、C4-HSL)の影響について、in vitroの系で解析を行った。ポジティブコントロールとしてバンコマイシン(VCM)を用いた。その結果、緑膿菌QS分子の溶媒であるDMSOについて、10%以上のDMSOでは阻害を認めたが、緑膿菌QS分子による直接的なMRSA阻害は確認されなかった。VCMのMICは1μg/mlであった。さらに、3-oxo-C12-HSLとC4-HSLを同時に投与した影響について観察したが、この刺激においても直接的なMRSA阻害は確認されなかった。以上の結果より、緑膿菌QS分子単独ではMRSA増殖阻害効果は有しない可能性が示唆された。今後、病原性に関与するLPSやバクテリオファージなどと同時に刺激した効果について検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では抗MRSA対策として、好中球やマクロファージの免疫応答を活性化する緑膿菌クオラムセンシング(QS)分子の直接的作用に注目し、解析を行った。緑膿菌QS分子として、バイオフィルム形成や毒素因子産生への関与が報告されている3-oxo-C12-HSLとC4-HSLを用いた。 その結果、緑膿菌QS分子による直接的なMRSA阻害は確認されなかった。3-oxo-C12-HSLは宿主の免疫応答に働きかけ、炎症性サイトカイン産生を誘導することが明らかになっている。そのため、3-oxo-C12-HSLがサイトカイン産生誘導により、白血球(好中球、マクロファージ)によるMRSA殺菌を高める可能性があり、次なる解析への足がかりを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回のin vitroの結果により、緑膿菌QS分子は直接的にMRSA殺菌に関与しないことが明らかになった。今後は、白血球存在下における緑膿菌QS分子の役割、MRSA殺菌能の解析、さらにマウス感染モデルを用いたMRSA殺菌能を解析することにより、新たなMRSA制御法開発に繋げることができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
病原性に関与するLPSやバクテリオファージなどと同時に刺激した効果について検証をするための経費として、平成27年度請求額にあわせ、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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