研究実績の概要 |
皮膚損傷後に起こる炎症反応は、創部に様々なサイトカインや増殖因子を誘導し, 治癒の起点となる. 創傷における炎症誘導のイニシエーターとして,壊死組織や死細胞から放出される内因性のダメージ関連分子パターン (DAMPs) が注目されている。DAMPsの認識に関与するパターン認識受容体として、 マクロファージや樹状細胞等が有するC型レクチン受容体 (CLRs) が挙げられる。本研究では、 CLRs(Mincle)とその下流のをアダプター分子であるCARD9に注目し、創傷治癒との関連について解析を行った。 WT (C57BL/6) マウスとCARD9遺伝子欠損 (KO) マウスの背側に開放創を作成し、その治癒過程について解析を行った。WTマウスに比べ、CARD9KOマウスでは創作成5、7、10日目の創閉鎖率が有意に低下した。また、マクロファージ集積が創作成24時間後にWTマウスと比べ、CARD9KOマウスで有意に低下した。マクロファージ集積に重要なケモカインであるMIP-1α,β産生も同様にCARD9KOマウスで有意に低下した。CARD9の上流に存在するCLRsの一つであるMincleの創部での発現をWTマウスとCARD9KOマウスで比較したところ、創作成24時間目の創部Mincle発現細胞数がCARD9KOで有意に低下していた。 本研究により、Mincleを介したCARD9シグナルがサイトカイン、ケモカイン産生および白血球集積に関与し、創傷治癒過程に重要な役割を担う可能性が示唆された。
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