顔面骨折治療の際に骨折を接合目的で使用するチタン合金のプレートを皮下に埋入する際、皮膚が薄いため、屋外での紫外線の影響を受けることが知られている。今回我々はこの短期的紫外線暴露による不可視光線中に含まれる電磁波がチタン接触組織内でどのような変化を起こすかを探索した。生体親和性を確認するため、ヘアレスマウス(無毛マウス)背部皮下にチタンプレートおよびL-乳酸グリコール酸共重合体(PLA)プレートを対象として移植し4か月後に病理学的検証を行ったところ、チタンプレート埋入群も吸収プレート群も膠原繊維による被膜形成を確認したが、チタンプレートのほうが被膜も薄く、炎症細胞の浸潤も鎮静化し、同一期間では吸収プレートよりもはやい速度で成熟瘢痕となっていたため、チタンは埋入されたのちに強固に皮下組織と結合し周囲組織の瘢痕用変化を促すことが理解できた。次に抗菌性性能評価を検討するため、同じくヘアレスマウス皮下にチタンプレートを埋入し、同一部位に黄色ブドウ球菌(MSSA)を播種し、マウスを紫外線照射群と非照射群とに分け、4日後の炎症反応および局所抗菌作用を観察した。UVB照射群と未照射群との間では高濃度播種において潰瘍を作る傾向があった(1匹/3匹中)が、明らかに光触媒による抗菌作用を示唆する所見は今回の実験では得られなかった。
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