本研究は脂肪由来幹細胞投与による放射線照射による皮膚軟部組織損傷の治癒過程で幹細胞がどのような役割を果たしているか解明することを試みたものである。 我々はラットの下肢に放射線を照射してリンパ浮腫モデルを作成して、同モデルに脂肪由来幹細胞を投与してリンパ管の再生およびリンパ浮腫の改善を確認している。さらなるリンパ浮腫の改善を目指して我々は下肢リンパ浮腫モデルに血行があるリンパ節を移植して脂肪由来幹細胞を投与したところ著しいリンパ浮腫の改善と、再生したリンパ管と移植したリンパ節の吻合も確認した。このことは放射線照射による皮膚軟部組織損傷の治療は脂肪由来幹細胞の単独投与だけでなく血行がある組織移植の併用がさらに有効であることを示唆している。 また、我々はラットの下肢虚血肢のモデルに放射線を照射すると下肢壊死となるモデル作成していた。このモデルに脂肪由来幹細胞を投与すると下肢が救肢されるが、さらに放射線を照射した下肢に血行がある皮弁を付加すると、脂肪由来幹細胞だけ投与した群や皮弁の付加だけを行った群に比べて、下肢の血流の増加、新生血管の増加および照射した下肢の足底に作成した皮膚欠損創の治癒期間の短縮を認めた。このことは、放射線照射による皮膚軟部組織損傷の治療には脂肪由来幹細胞の投与は十分に治療効果は望めるが、現在行われている血行が豊富な皮弁や筋弁移植を併用することで、それぞれ単独で使用するより、さらなる治療効果が期待できることを示唆している。 この虚血+放射線照射モデルにラベルした脂肪由来幹細胞単独投与群と皮弁付加併用群を比較すると幹細胞単独投与群の方が明らかに多く投与した幹細胞が新生血管に認めた。放射線照射した組織に脂肪由来幹細胞単独投与と血行のある組織移植を併用したものでは幹細胞のふるまいが違い、周囲の環境により緻密な制御されていることが示唆され、さらなる検討が必要である。
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