研究実績の概要 |
ヒト検体の初代培養より得たケロイド由来皮膚線維芽細胞(以下KeF)と白色瘢痕由来皮膚線維芽細胞(以下WSF)それぞれ10株ずつを研究に用いた。まず予備実験として、Ⅰ型コラーゲンにてコーティングされた硬度可変ハイドロゲルディッシュにおける皮膚線維芽細胞の培養条件を検討した。0.5, 1, 5, 10, 50kPaのディッシュ上にてKeFとWSFを培養して、播種する細胞数と培養期間を決定した。 続いて、KeFとWSFをそれぞれ硬度2kPaと50kPaのハイドロゲル上で1週間培養した後、RNAを抽出し、Ⅰ型コラーゲンの遺伝子発現を解析した。しかし、KeFとWSFにおける遺伝子発現に一定の傾向を認めることが出来なかった。そこで、用いているKeFとWSFを通常のディッシュ上にて継代した上で、Ⅰ型コラーゲンの遺伝子発現を解析した。すると、KeFの中にもWSFと同等のⅠ型コラーゲンの発言しか認めない株が存在した。これは、初代培養の過程においてケロイドの形質を有しない線維芽細胞が選択的に増殖してしまったためと考えられた。そこで、保有している全ての細胞株についてⅠ型コラーゲンの発現を解析し、発現が特に高いKeF5株と発現が低いWSF5株について、硬度2kPa, 50kPaのハイドロゲルディッシュと通常のディッシュ(GigaPa)で1週間培養した後、Ⅰ型コラーゲン、Ⅲ型コラーゲン、ファイブロネクチンの遺伝子発現を解析した。その結果、KeFの方が足場の硬度に対してよりsensitiveであることがわかった。 続いて足場の硬度に反応して核内移行し、蛋白質の転写を引き金となるYAPについて、ケロイド・正常瘢痕の検体を用いて免疫染色を行った。その結果、ケロイド検体においてYAPの核内移行を認め、ケロイドが細胞外基質硬度のpositive feedbackによって硬さを増している可能性が示された。
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