研究実績の概要 |
我々は高血糖を合併した急性肺傷害においてインスリンの経気道吸入が静注よりも効率よく炎症反応を抑制することを示した(Crit Care 2013).しかしながら、インスリンの抗炎症作用が高血糖に対する血糖降下作用による作用なのかインスリンの直接的な抗炎症作用なのかが今一つ明らかにされていなかった。そこで血糖レベルの影響を受けずに純粋にインスリンの作用を明らかにするために、今年度はまず正常血糖下でのインスリンの効果を検討するためのモデルを確立した.次にウサギをコントロール群(C群)とインスリンエアロゾール吸入群(I群)に無作為割付し,肺洗浄による急性肺傷害モデルを作成した.今年度はI群では1 IU/kgのインスリンを,C群は同量の生食を3時間毎に吸入させることで、血糖値を80-180mg/dlの正常血糖に収めた。治療中は循環動態や血液ガス、血糖値をモニターし、6時間後に肺を摘出し,肺傷害作成前と実験終了時の肺胞洗浄液(BALF)中のIL-8,Toll様受容体4(TLR-4),組織中の ENaCα,SGK-1,TGF-β1,KGFなどを測定した(いずれもPCR法によるmRNA発現). 今回の正常血糖モデルでは,インスリンが炎症反応を有意に有意に抑制する傾向は示されなかったが,インスリン吸入によりENaCαの発現が増加する傾向を認めた。次年度はインスリン静注群(IV群)を加えてさらに例数を重ね、また組織学的な差異を検討したい.
|