研究課題
急性腸間膜虚血(Acute mesenteric ischemia: AMI)は腸管の血流が途絶え、腸管の一部あるいは広範な部分が壊死に陥る病態で、診断の遅れは多臓器障害の発症、集中治療の必要性、高い死亡率につながる。特に頻度が高い高齢者は、腹膜刺激症状が弱いまま進行する場合があり、今後の高齢化社会において血清による早期診断の確立は切望されている。本研究では、全身麻酔下にて開腹し豚腸管虚血モデルを作成し、経時的に血漿と腹水を採取した。日常、虚血など嫌気性代謝の測定として乳酸を計測するが、腹水中の乳酸値が経時的に増加していくのに対して、血液中では乳酸上昇を捉えることが出来ないモデルの作成を行った。核磁気共鳴を用いた波長解析、遠赤外線を用いた波長解析で血漿中の代謝物変化など変化しうるかを検討した。遠赤外線波形解析を用いると、特定の波長領域に数か所に経時的に変化をするところを捉えることが出来た。核磁気共鳴を用いた代謝物計測においても経時的な変化を捉えることができた。以上の成果は、血清を用いて急性腸間膜虚血の有無を早期診法へと発展する可能性を示唆している。さらに、サンプル数を増加し、急性腸間膜虚血の早期診断法の開発を推進していくための方向性を見出した重要な実積が得られたと考えている。