研究課題/領域番号 |
26670788
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小島 将裕 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70721091)
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研究分担者 |
吉矢 和久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40379201)
山田 知輝 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (40623434)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50196474)
小倉 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301265)
中村 洋平 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (80644004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / シークエンサー / 重症患者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は重症救急患者において、次世代シークエンサーを用いて従来の培養法やPCR法では限界のあった腸内細菌叢を解析し、新たな腸管内治療を開発することである。当院来院時より人工呼吸管理を要する重症救急症例を対象として、急性期の第7病日まで経時的に直腸内にスワブを挿入して採取した肛門ぬぐい検体を次世代シークエンサーを用いて解析した。本年度は12症例を検討した。その結果、腸内細菌叢を主として構成する細菌はバクテロイデス門とファーミキューティス門であるが、急性期にはかなりダイナミックな細菌叢の構成の変化が生じており、主となる細菌群の転換が起こる場合も多いことが示された。また、細菌叢の変化の指標として、バクテロイデス門の構成割合(%)/ファーミキューティス門の構成割合(%)をB/F ratioとして、各病日での値をプロットした。興味深いことに、この値が大きく変化する症例では最終的な生死の予後が悪化することが示唆された。また、次世代シークエンサーで得られたゲノム情報をOTU(operational taxonomic unit)で解析し、検体中の腸内細菌叢を構成する細菌の種類数を検討したところ、第1病日と第7病日では第7病日の方が有意にOTU数の低下が見られ、腸内細菌叢の多様性も急性期には低下することが示唆された。これらの結果より、重症救急患者の急性期には腸内細菌叢の急激な変化が生じており、過度の変化は生体に悪影響を及ぼす可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としている重症救急患者の急性期の腸内細菌叢の変化の検討は、さらに症例数を重ねることで達成できるものと考える。次世代シークエンサーは培養法に比べより鋭敏に変化を捉えることが出来る技術的な背景があり、かつ種々の論文でも検査の妥当性が証明されているためである。また、以前より有効性が検討されているプロバイオティクスの有効性の検討についても、現行の方法をプロバイオティクスを行った症例にも適応することで、可能と考える。しかし、当初計画していたウィルスの検討は技術的に困難であり、今後は細菌に絞った検討を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討では症例数が不十分であるため、今後もさらに症例数を増やして検討していく。急性期を越えた症例に関しては亜急性期の検体採取も行い、検討を行っていく。また、腸内細菌叢の変化を引き起こしている要因として抗生物質の使用、腸管循環不全、栄養療法の差違など多くの要素が考えられるが、どの因子が最も大きな影響を与えている可能性が高いのかを統計的に解析していく。また、腸内細菌叢の変化に伴って、便中の腸内環境がどのように変化しているのかを便中脂肪酸やpHの検討などを行っていく。さらに宿主側の免疫応答の評価として、注目されている便中のIgA抗体や血中炎症性サイトカインや血中のリンパ球サブセット(Th17やTh1/Th2)の検討も行っていきたい。
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