研究実績の概要 |
本研究の目的は、50種類で7割の日本人に適合するHLAハプロタイプホモ細胞を、ゲノム編集技術によって作り出すことである。HLAハプロタイプホモドナーは、大規模なスクリーニングによって得ることが可能であるが、稀なHLAタイプがホモになる確率は非常に低く、日本人の2割程度は数十万人のスクリーニングでもカバーできないと予想される。そこで、近年進歩が著しいゲノム編集技術を利用して、擬似的にHLAハプロタイプホモ細胞を作り出す技術を開発することを試みた。 HLAタイプがA*02,33;B*44,-;DRB1*13,-の歯髄細胞(DP144)を用いて、表現型がA*33,N;B*44,-;DRB1*13,-という、見かけ上日本人出現頻度2位のHLA3ローカスハプロタイプホモ細胞を作製した。DP144にエレクトロポレーションによりHLA-A2遺伝子のエクソン2および3配列に特異的なzinc finger nuclease (ZFN)をコードするプラスミドベクターを導入後、抗HLA-A2モノクローナル抗体で標識し、FACSにて陰性画分を回収した。細胞を培養後、DNAを抽出、PCR法によってHLA-A2領域を増幅して塩基配列を確認したところ、約5割の細胞で変異が確認された。一方、HLA-A33アリルには変異は確認されなかった。さらに、この細胞に、センダイウイルスベクターをもちいて山中4因子を導入し、iPS細胞コロニーを得た。 ポリモルフィズムが高い領域を選んで、ZFNを設計することによって、HLA-Aの片アリルだけを破壊することができた。HLA-A2は世界的にも出現頻度が高いアリルであり、国内だけでなく海外で集めた細胞にも使用することができる。
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