研究課題/領域番号 |
26670802
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高田 隆 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (10154783)
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研究分担者 |
古庄 寿子 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (00634461)
北川 雅恵 広島大学, 大学病院, 助教 (10403627)
宮内 睦美 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 准教授 (50169265)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 早期低体重児出産 / Galectin-3 / Porphyromonas gingivalis / 歯性感染 / 胎盤栄養細胞 / LPS / TNF-a / COX-2 |
研究実績の概要 |
本年度は①P.g.-LPS,Galectin-3刺激後の 胎盤栄養細胞における出産に関わるメディエータの発現とP.g.-LPS の誘導するメディエータ発現上昇に及ぼすGalectin-3中和抗体の影響について検討した.P.g.-LPS,Galectin-3はともにTNF-α,IL-8およびCOX-2の発現を一過性に上昇させた.なお,両刺激によってGalectin-3自体の発現も増加していた.また,Galectin-3中和抗体処理はP.g.-LPS刺激によるメディエータmRNA発現上昇を著明に抑制し,P.g.-LPS刺激で培養上清中に産生されるTNF-α産生量を43.5%減少させた.よって,P.g.歯性感染の誘導する早産発症メカニズムには,P.g.-LPS刺激によるメディエータの発現自体の促進とともにGalectin-3を介したメディエータの産生増幅の悪循環が関わる可能性が示された. ②P.g.歯性感染妊娠マウスモデルの胎盤の解析を行い,正常マウスと比較検討した.P.g.を上顎臼歯歯髄から感染させ6週後,P.g.の持続的供給源である歯根肉芽腫の形成を確認をした後,交配し,在胎日数を比較した.P.g.感染群は平均18.4日で2日ほど早産であった.両群で経時的な胎盤の変化を比較検討したところ,在胎15日目の感染群の胎盤で,胎盤細胞,浸潤マクロファージにGalectin-3が強く発現していたが,TNF-α;発現はマクロファージにみられる程度であった.在胎17日目にはGalectin-3に加え,TNF-αも胎盤細胞や浸潤マクロファージに広く発現するようになった.正常胎盤ではいずれの時期にもGalectin-3とTNF-α発現は軽微であった.よって,Galectin-3は歯性感染マウスモデルの早産発症メカニズムにおいて重要な役割を果たすと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の目標は概ね達成で来ているが,胎盤や血清におけるGalectinn-3測定が出来ていない.15,17日に加え,12日目の母胎血清と可能であれば羊水を集め27年度に解析する. 一方,Galectin-3抑制剤投与実験に関しては,実験が進んでいる.既に,投与方法,投与のタイミングや回数の検討が進み至適な条件が確立し,同方法を用い歯性感染妊娠マウスモデルでの早産が制御され,ほぼ正常マウスと同程度まで改善されてることを確認している.27年度には予定している本実験に取りかかることが出来る. よって,概ね順調に進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.N-acethl-lactosamine(N-Lac)の早期低体重児出産発症の予防効果の検討 26年度にはP.g.歯性感染妊娠マウスモデルでの早産発症過程におけるGalectin-3の重要性について明らかにした.今年度は,Galectin-3抑制剤であるN-Lacの投与方法,投与のタイミングや回数の検討が進み至適な条件は26年度の予備実験で既に決定済である.また,同方法を用い歯性感染妊娠マウスモデルで早産が制御される事も確認している. 平成27年度は、非感染群,歯性感染群,N-Lac投与群(各6匹)で1. 妊娠期間,新生児体重の評価,2. 胎盤の経時的組織変化,3. 羊水Galectinn-3とサイトカインの経時的変化,4. 血清のGalectinn-3とサイトカインの経時的変化について比較検討し,早期低体重児出産発症に対するN-acethl-lactosamin予防/治療効果を評価する. Ⅱ.P.g.-LPS誘導サイトカイン発現に及ぼすGalectin-3抑制の予防効果の検討 1.si-Galectin-3を用いた検討; 胎盤栄養細胞にGalectin-3のsiRNAを導入したsiGalectin-3細胞を用い,P.g.-LPSやGalectin-3の影響について検討する.2. N-Lacを用いた検討; 胎盤栄養細胞を用い,P.g.-LPS刺激やGalactin-3刺激によるTNF-αやPGE2産生に及ぼすN-Lacの影響について検討し,P.g.-LPSの誘導するメディエータ産生におけるGalectin-3の重要性について明らかにする.また,シグナル伝達系阻害剤を用い,Galectin-3刺激に関わるシグナル伝達系を調べる. これらの研究結果について総括し, Galectin-3を標的とした早期低体重児出産の早期診断システムの構築と予防法開発の可能性を探る.
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