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2014 年度 実施状況報告書

切歯歯胚の外エナメル上皮には新規シグナリングセンターが存在するか?

研究課題

研究課題/領域番号 26670805
研究機関岩手医科大学

研究代表者

原田 英光  岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70271210)

研究分担者 藤原 尚樹  岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (20190100)
熊上 深香(坂野深香)  岩手医科大学, 歯学部, 研究員 (30710826)
大津 圭史  岩手医科大学, 歯学部, 助教 (60509066)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード歯の発生 / 切歯歯胚 / エナメル上皮幹細胞
研究実績の概要

我々は,切歯の発生過程のメカニズムを調べるために,発生過程で細胞がどのように動いているかをライブイメージングによって観察した。その結果,胎生16日齢のマウス切歯歯胚において唇側のエナメル上皮が伸張する時に,外エナメル上皮の中央部に切縁方向と形成端方向の両方に細胞を供給している特殊な領域(Dental Epithelial bulge of Outer Enamel Epithelium; DEB of OEE)を見いだした。その動きは,まさに毛の幹細胞が存在するバルジの細胞の動きとよく似ていた。そこで,その部位の細胞生物学的特性を明らかにして,切歯発生の新しいメカニズムの発見を目的に研究を行った。まずより詳細な形態を明らかにする目的で3次元的に歯胚を観察する新規方法の開発に取り組んだ。上皮のみが赤色蛍光を示すCK14cre-tdTomatoマウスを作出し,さらに標本を透明化することで,胎生15日齢の切歯歯胚が顎骨の中に存在する状態を3次元的に観察することに成功した。また細胞周期をモニターするFucciマウスを使うことによって切歯歯胚細胞を形成する細胞の周期をリアルタイムで観察することにも成功した。上記の方法によって,切歯歯胚には臼歯の歯胚とは異なる歯堤の形態をとっていることが明らかとなり,さらにDEB of OEEの位置は口腔粘膜上皮と連続する舌側の歯堤と相対的な位置として存在することが明らかとなった。この結果は歯胚の形態形成や成長が歯堤の位置や細胞の動きと密に関連していることを示唆していた。細胞周期を観察した結果から,このDEB of OEEは他の上皮と異なって増殖が停止している領域であることが明らかとなり,臼歯歯胚のエナメル結節との類似性を認めた。さらにこのDBの細胞はグリコーゲンを貯蓄していることも示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究申請書の作製時期と比べ,いくつかの新しい研究手法を取り入れることができた。CK14cre-tdTomatoを用いた透明標本による歯胚の作製や細胞周期の新規観察方法などの技術により,計画した内容よりも予想以上に多くの新規知見を得ることができた。一方で計画書記載の遺伝子解析については計画よりも遅れている。総合的に判断すると,目的達成に向けては順調に進んでいると言える。

今後の研究の推進方策

1)CK14cre-tdTomatoを用いた切歯歯胚3次元観察による切歯歯胚発生過程の観察を行う。この方法によって,切歯歯胚の歯堤とDEB of OEEの発生過程での変化,ならびに切歯幹細胞の形成過程を明らかにする。2)DEB of OEEでの遺伝子発現についての解析を昨年度に引き続き継続して行う。3)切歯器官培養を用いてDEB of OEEで特異的に発現する遺伝子について,過剰発現と機能抑制実験を行うことで,DEB of OEEの役割を明確にする。上記の結果から,DEB of OEEの生物学的意義や発生過程での役割,進化との関係,臼歯発生との相違点などを整理して,恒常的に成長し続ける器官の発生について考察する。

次年度使用額が生じた理由

研究は概ね順調に進行しているが,遺伝子発現解析等においての実験が少し遅れている。そのために必要な試薬等の購入が一部行われなかったためである。

次年度使用額の使用計画

遺伝子発現解析や機能獲得・喪失実験に使用する培養用試薬や分子生物学的試薬の購入に充てる。研究成果発表(第57回歯科基礎医学会)のための学会出張旅費を支出する。論文作製のための英文校正のための費用等として使用予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The enamel knot-like structure is eternally maintained in the apical bud of postnatal mouse incisors2015

    • 著者名/発表者名
      Chihiro Nakatomi, Mitsushiro Nakatomi, Kan Saito, Hidemitsu Harada, Hayato Ohshima
    • 雑誌名

      Archives of Oral Biology

      巻: 0 ページ: 0

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Live imaging to elucidate cell dynamics in tooth organogenesis and regeneration.2015

    • 著者名/発表者名
      Harada H, Kumakami-Sakano M, Fujiwara N, Otsu K.
    • 雑誌名

      Journal of Oral Biosciences

      巻: 57 ページ: 65-68

    • DOI

      10.1016/j.job.2015.02.005

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Regenerated teeth: the future of tooth replacement. An update.2015

    • 著者名/発表者名
      Thimios A Mitsiadis and Hidemitsu Harada.
    • 雑誌名

      Regenerative Medicine

      巻: 10 ページ: 5-8

    • DOI

      10.2217/rme.14.78

  • [学会発表] 歯根発生メカニズムの新規仮説と歯根形態異常2015

    • 著者名/発表者名
      熊上 深香、大津 圭史、藤原 尚樹、原田 英光
    • 学会等名
      第56回 歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      2015-09-25 – 2015-09-27
    • 招待講演
  • [学会発表] 生後マウス切歯apical budにエナメル結節様構造が恒久的に維持されている2015

    • 著者名/発表者名
      中富 千尋、中富 満城、齋藤 幹、原田 英光、大島 勇人
    • 学会等名
      第56回 歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      2015-09-25 – 2015-09-27

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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