1.Wntアンタゴニスト遺伝子座へのノックイン細胞の作製:WntアンタゴニストであるFRZBの発現をモニターできる、ハイスループットアッセイスクリーニングシステムを構築するために、TALENゲノム編集法を用いて、SW1353細胞株のFRZB遺伝子座にルシフェラーゼレポーター遺伝子カセットを挿入した。 2.PITCh法の改良ドナーベクターの作製:PITCh法によるゲノム編集法をより効率的に実施でき、ノックイン細胞の検出を簡易化するために、新規PITCh法ドナーベクターを作製した。すなわち、3xFlag標識配列と分泌型ルシフェラーゼに加えて、蛍光遺伝子Venusとピューロマイシン耐性遺伝子(Puro)を2Aペプチド配列で接続したカセットをloxP配列で挟み込んで、ドナーベクターに挿入した。 3.WntシグナルにおけるTAZの役割の解明:抗SOST抗体の骨形成に対する作用が注目される一方で、骨芽細胞におけるWnt/b-カテニンシグナルの活性化が、急性骨髄性白血病を誘発する可能性が懸念されている。そこで、off-targetの少ない骨形成促進薬の開発に貢献するために、骨形成を選択的に促進するWntシグナルの活性化機構を明らかにすることを目指した。その結果、Wntシグナルの新たな転写制御因子であるTAZが、Wnt3aによる骨芽細胞分化誘導効果に必須であることを見出した。またb-カテニンと共に機能するLef1もWnt3aの骨芽細胞分化誘導能に必要であることを示した。興味あることに、TAZとLef1が連動することにより、未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化を促進していることを明らかにした。さらに、Wnt3aは、骨形成因子BMP2と相乗的に骨芽細胞分化を促進すること、そのメカニズムとして、TAZ、Lef1と転写因子Runx2との相互連携が深く関与していることを見出した。
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