研究課題/領域番号 |
26670809
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
兼松 隆 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10264053)
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研究分担者 |
浅野 智志 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30570535)
原田 佳枝 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (60432663)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白色脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / 脂肪分化 / エネルギー代謝 / 寒冷刺激 / ベージュ細胞 |
研究実績の概要 |
我々は、PLC-related catalytically inactive protein (PRIP) 遺伝子欠損マウスからmouse embryonic fibroblast (MEF) を作製し脂肪細胞へ分化転換したところ脂肪細胞分化が著しく抑制されていた。一方、成熟脂肪細胞を天井培養すると脂肪細胞は脱分化し脱分化脂肪細胞(DFAT)と呼ばれる多能性前駆細胞が得られるとの報告がある。そこで、本研究では、脂肪細胞への分化と脂肪細胞の脱分化におけるPRIPの役割解明研究を行った。先ず脂肪細胞の天井培養法を確立しDFAT への脱分化誘導実験をおこなった。得られたDFATを用い、マーカー遺伝子の発現をreal-time PCR 法を用いて比較解析を行った。その結果、野生型とPrip-KO 型から調整したDFATでの遺伝子発現に大きな差は認められなかった。引き続き、得られたDFATを分化誘導因子カクテルを用いて脂肪細胞へ分化誘導したところ、Prip-KO 型の分化が著しく抑制されることをマーカー遺伝子の発現やOil Red O 染色法を用いて明らかにした。 さらに、野生型とPrip-KO マウスから調整したMEF細胞を用いて分化誘導因子カクテルを用いて脂肪細胞へ分化誘導し遺伝子発現変化を解析した。脂肪細胞分化を導くPPARγ2やC/EBPαなどの発現がPrip-KO型で著しく減っていた。 次に、マウスに高脂肪食負荷実験を行った。Prip-KO マウスでの脂肪組織への脂肪蓄積は著しく抑制された。その原因として白色脂肪細胞への脂肪蓄積減少に加えて、褐色脂肪細胞の遺伝子発現変化やタンパク質発現変化を伴うエネルギー代謝亢進が関わっていることを明らかにした。また、寒冷刺激実験から白色脂肪細胞にある前駆細胞のベージュ細胞への分化がPrip-KO マウスで異なる事を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PRIP分子による脂肪細胞の脱分化過程への関与が少ない事が明らかとなった。一方で、前駆細胞から白色脂肪細胞への分化にはPRIPが大きく関与している事を明らかにした。引き続きPRIPが仲介する前駆細胞から脂肪細胞分化への分子メカニズムを検討している。また、マウスを用いた高脂肪食負荷実験でPRIP欠失が個体レベルのエネルギー代謝に影響を及ぼす事を明らかにすることができた。その主な原因として、褐色脂肪細胞でのエネルギー代謝関連の遺伝子発現にPRIP分子が寄与している事を明らかにした。また、寒冷刺激において白色脂肪細胞のベージュ細胞への分化過程におけるPRIP分子の関与を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
PRIPが脂肪細胞分化に関与する事が分かり、その分子基盤の一端が分かってきた。脂肪前駆細胞は近年ベージュ細胞へと分化する事で生体エネルギー代謝に関わる事が明らかとなってきており、PRIPが仲介する脂肪細胞への分化制御機構を引き続き検討する。この様に脂肪細胞分化の分子基盤が明らかにして、DFATから他の細胞(骨芽細胞など)への分化制御機構との違いを明らかにするよう実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費は概ね予定通り使用した。ただし、年度の終わりに小額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に消耗品費として使用する。
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