研究課題
現代の食の高脂肪・高甘味化は、恒常性の破綻に導き、肥満者増加の主要因となっている。 本研究では、その脂質への高嗜好性形成のシグナル受容・調節・伝達の分子神経機構を探求する目的で、課題1) 脂質特異的味受容細胞が存在するか、課題2) 脂質特異的情報を脳に伝える神経線維が存在するか、課題3) 食餌依存的な脂質嗜好変化が味応答のレプチン/エンドカンナビノイド調節系変化と連関するかを検索した。本年度はその中で、特に課題2)と3)について行った。課題2)では、昨年度、鼓索神経単一線維35本の味応答プロファイルを検索し、脂肪酸ベスト応答を示す線維が6本あり、甘味・うま味・Caの各ベスト線維の一部が脂肪酸応答を示すことを明らかにした。本年度は脂肪酸の受容機構を、受容体阻害剤による応答抑制効果を指標に検索した。その結果、脂肪酸ベスト線維の脂肪酸応答はGPR120阻害剤・AH7614の濃度依存的に低下し、GPR40阻害剤・GW1100では変化がないことが分った。すなわち、鼓索神経の脂肪酸応答にはGPR40は関与せず、GPR120が重要な役割を果たしていることが明らかになった。課題3)では、高脂肪食摂取マウスの肥満に伴うレプチン及びエンドカンナビノイドによる味覚修飾効果の変化について検索した。その結果、肥満に伴い血中レプチン濃度が上昇すると、レプチンによるショ糖応答に対する抑制効果が低下し、その味細胞におけるレプチン抵抗性の進行は、エンドカンナビノイドによるショ糖応答の増強作用を顕在化させることが分かった。また、ショ糖に脂肪酸を加えた混合溶液で刺激を繰り返すと、自己増幅的に応答が増強した。この増強効果はエンドカンナビノイドCB1受容体の阻害剤投与により消失することから、脂肪酸及びショ糖応答の増強は味細胞のエンドカンナビノイドCB1受容体を介してもたらされていることが明らかとなった。
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