研究課題/領域番号 |
26670811
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小守 壽文 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00252677)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨細胞 / Fkbp5 / 非荷重 / グルココルチコイド |
研究実績の概要 |
骨細胞ネットワークが破綻した骨芽細胞特異的Bcl2トランスジェニックマウスを用いて、骨細胞ネットワークの機能を解明してきた。このマウスを用い、非荷重時に骨細胞ネットワークの存在下でのみ誘導されるFkbp5(FK506 binding protein 5)を同定した。Fkbp5は、ステロイドレセプターに結合するシャペロン分子の1つである。Fkbp5の骨における機能を明らかにするため、ノックアウト(Fkbp5-/-)マウスを作製した。 1.グルココルチコイドレセプター(GR)、プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)、エストロゲンレセプター(ER)の転写活性化能に対するFkbp5の機能解析 GR, PR, AR, ERa, ERbそれぞれに対するレポーターベクター、標準化用のレニラルシフェラーゼベクターを、野生型マウスおよびFkbp5-/-マウスから得た頭蓋冠由来骨芽細胞にそれぞれ導入、デキサメサゾン、プロメゲストン、ジヒドロテストステロン、b-エストラジオールを種々の濃度で添加、48時間培養後にルシフェラーゼ活性を測定した。GRに対するレポーターベクターを用いたデキサメサゾンの添加実験のみ、Fkbp5-/-骨芽細胞で野生型骨芽細胞に対してレポーターアッセイの上昇を見た。 2.非荷重実験 8週齢の雄および雌の野生型マウスとFkbp5-/-マウスを用いて1週間尾部懸垂を行い、マイクロCTで骨密度および骨量を比較した。雄マウスでは、Fkbp5-/-マウスでのみ、骨密度低下および骨量が低下していた。雌マウスでは野生型マウスおよびFkbp5-/-マウスともに骨密度低下および骨量が低下していたが、その程度はFkbp5-/-マウスの方が強かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルココルチコイドレセプター(GR)、プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)、エストロゲンレセプター(ER)の転写活性化能に対するFkbp5の機能解析は修了し、Fkbp5-/-骨芽細胞では、グルココルチコイドにのみ過剰に反応することを明らかに出来た。尾部懸垂を用いた非荷重実験も修了し、Fkbp5-/-マウスでは、雄、雌ともに非荷重時における骨量減少が野生型マウスより強く起こることを明らかに出来た。また、骨芽細胞分画および骨細胞分画を用いた遺伝子発現解析も修了している。ただし、Fkbp5-/-マウスを2.3 kb Col1a1 GFPトランスジェニックマウスと交配して、外骨膜側と内骨膜側の骨芽細胞を、セルソーターを用いてGFPで分離する方法は、予備実験に時間がかかり、まだ確立できていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.セルソーターを用いたGFP陽性骨芽細胞の分離は、週齢、尾部懸垂日数の検討等を行い、I型コラーゲンの低下が起こるが、GFPを陽性として分離できる条件検討を行う。 2.グルココルチコイド投与実験を行う。8週齢の野生型マウスおよびFkbp5-/-マウスの背部皮下に、徐放性プレドニゾロンペレット(低容量1.25m/kg/day、高容量3.2 mg/kg/day)あるいはプラセーボペレットを植え込み、1週間ごとに体重を測定するとともにマウスの挙動を観察する。4週間後に屠殺、大腿骨をマイクロCT、骨組織形態計測で比較する。TUNEL染色で、骨芽細胞、骨細胞におけるアポトーシスを比較する。屠殺時に血清を採取し、血糖、コレステロール、中性脂肪、アルブミン、コリンエステラーゼ、CPK、LDH等を測定し、プレドニゾロンの耐糖能、脂質代謝、筋に対する作用を調べる。筋重量を測定するとともに組織切片で筋細胞面積を計測し、筋萎縮を比較する。また、消化管潰瘍や出血がないか腸管を調べる。骨芽細胞分画および骨細胞分画を用いて、リアルタイムRT-PCRおよびマイクロアレイ解析を行う。マイクロアレイ解析で選択された遺伝子は、リアルタイムRT-PCRで確認後、発現ベクターを作製する。初期培養骨芽細胞に導入、アルカリホスファターゼ染色、von Kossa染色を行うとともに、骨芽細胞マーカーの発現をリアルタイムRT-PCRで調べ、骨芽細胞分化・機能に関与するか調べる。また、発現ベクターを導入した初期培養骨芽細胞を骨髄細胞と共培養、破骨細胞形成支持能を調べる。 3.1で確立した方法を用いて、尾部懸垂実験およびグルココルチコイド投与実験マウスより、外骨膜側骨芽細胞分画、内骨膜側骨芽細胞分画、骨細胞分画RNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Fkbp5-/-マウスを2.3 kb Col1a1 GFPトランスジェニックマウスと交配して、外骨膜側と内骨膜側の骨芽細胞を、セルソーターを用いてGFPで分離する方法を検討するのに時間がかかった。そのため、2.3 kb Col1a1 GFPトランスジェニックマウスとFkbp5-/-GFPトランスジェニックマウスからGFP陽性細胞を外骨膜側と内骨膜側それぞれより単離して、マイクロアレイ解析(外注)を行うことが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
プレドニゾロンペレット(680千円)、Real Time PCR関連試薬、牛胎児血清、培養液の購入、マイクロアレイの外注(200千円/1ペアx6ペア=1,200千円)、マウス維持費: 15千円/月x 12ヶ月=180千円、国内旅費 @50千円x2人=100千円に使用する。
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