研究課題
本格的な高齢化社会を迎えた現代社会において、癌、糖尿病、循環器疾患、骨系統疾患を含む有病者の増加が予測されている。これらの疾患は慢性炎症を起こしやすく、そのため保存治療領域においては、難治性根尖性歯周炎を発症するケースが多い。しかし、これら有病者の慢性根尖性歯周炎の治療は未だに有効な手段は確立されてなく、その対策は今後増加する有病者の歯科医療技術の向上にむけて急務と言える。そこで本研究計画では、口腔内より抗炎症効果を有する細胞の採取技術の確立と、有病者の慢性根尖性歯周炎に対する抗炎症を目的とした細胞移植治療技術の開発を目指す。本年度はヒト顎骨より間葉系細胞採取プロトコールの確立を目指した。東北大学歯学研究科の倫理委員会で承認されたプロトコールに従い歯根端切除術の時に削除した骨より間葉系細胞の採取を試みた。その結果、細菌性コラゲナーゼを用いてTOYOBO社製のMF培地を用いて細胞採取を行う事が出来た。これらの細胞はBMP-2処理で石灰化、アルカリフォスファターゼ活性を示す事から、骨芽細胞への分化能力を有していることが確認された。次にマウスモデルを確立するため、歯周病モデルを用いてmatricellular proteinの発現を解析した。その結果、歯周炎モデルの急性炎症のステージで、fibrillin-1とtenascin-Cの発現が上昇し、その後に炎症が治まりtype I collagenの発現が確認されると、創傷治癒のステージに移行することが分かった。この過程でfibrillin-1の発現が低下すると、創傷治癒の遅延が生じることが判明した。これらの結果よりfibrillin-1とtype I collagenの発現誘導をモニターすることで、ヒト間葉系細胞の抗炎症効果を確認できることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
本年度は本研究計画で使用するヒト顎骨より間葉系細胞の採取技術を確立できた。マウス歯周組織の炎症をモニターするモデルを構築するため、本年度は歯周炎モデルを用いて解析を行った。根尖病巣モデルの確立に関しては着手が遅れているため、次年度に計画を持ち越した。しかし歯周炎モデルで構築した実験計画をそのまま応用することができるので、次年度で達成する事は可能である。そのため本年度の達成度はおおむね良好に進展していると判断した。
次年度の計画として、マウス根尖性歯周炎モデルの確立を試みる。ラットで既に確立されているモデルなので、同様の術式を用いてモデルを確立することを予定している。同モデルに関して、平成26年度で確立した炎症マーカーの解析を行い、炎症状態の経時的変化を解析する。ヒト間葉系細胞の移植に関しては、実体顕微鏡を用いた細胞移植技術を開発中で、同技術を用いて根管からの移植技術を開発する。これらの実験計画を行う事で、間葉系細胞移植による抗炎症療法の基盤技術を確立を図る。
本年度購入を予定していた分子生物学関連(遺伝子発現試薬)の試薬の購入が遅れたため次年度使用額が生じた。
次年度は早期に遺伝子解析関連の消耗品を早期に購入に使用する事を目的にしている。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
Expert Opin Biol Ther.
巻: 12 ページ: 1731-1744
doi: 10.1517/14712598.2014.960387
Sci Rep
巻: 4 ページ: 1-9
doi: 10.1038/srep06044.