研究課題/領域番号 |
26670825
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前田 英史 九州大学, 大学病院, 講師 (10284514)
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研究分担者 |
赤峰 昭文 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00117053)
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 講師 (60380466)
門野内 聡 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30609558)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯髄細胞 / カルシウム感知受容体 / カルシウム / ストロンチウム |
研究実績の概要 |
当初の計画として、ラットまたはヒト由来の歯髄細胞を用いてHoechst33342陽性細胞を単離する計画であったが、十分な数の母集団となる細胞数が得られなかったため、歯髄細胞を多量に用いることが可能なブタ歯髄細胞を実験に供することにした。さらに未分化な間葉系幹細胞マーカーとして注目されている、STRO-1陽性細胞を、磁気を利用したMACSを用いて単離に成功した。さらにこの陽性細胞は、陰性細胞と比較して、石灰化抑制効果のあるbeta-ig-h3の発現亢進しており、生体内で不要に石灰化しないように制御されていることが示唆された。 一方、ヒト歯髄細胞を用いて、カルシウム感知受容体(CaSR)が、歯髄細胞による象牙芽細胞への関与について明らかにするために、カルシウム、ストロンチウム、CaSR拮抗剤(NPS2143)を培養系に投与して、象牙芽細胞分化について解析した。その結果、カルシウムならびにストロンチウムで刺激したヒト歯髄細胞は、石灰化および象牙芽細胞のマーカーであるDentin Sialophosphoprotein (DSPP)の発現を有意に亢進した。さらにこの結果は、NPS2143の添加によって、有意に抑制された。 以上より、CaSRは、歯髄細胞の象牙芽細胞分化におけるシグナル伝達において、重要な働きをしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットおよびヒト歯髄細胞から得られる未分化な細胞数は極めて微量で、本実験を進めることが困難であった。しかしながら、細胞数の多いブタ歯髄を用いることで、十分な細胞数を定期的に確実に得られるようになった。さらにトランスレーショナルリサーチを念頭に置いているため、ブタ歯髄細胞の解析と同時にヒト歯髄細胞を用いてCaSRの象牙芽細胞分化へ影響について明らかにしようとしており、実際CaSRを介した象牙芽細胞誘導を示唆する結果が得られており、研究のロスタイムはないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ブタ由来の未分化な歯髄細胞におけるCaSRの発現を確認し、さらに同様にストロンチウムまたはカルシウムを用いて刺激を行い、その分化に及ぼす影響を明らかにする。またブタまたはヒト歯髄細胞が発現するカルシウムチャネル(L型およびT型)の発現やEGFレセプターの関与について解析する。さらに生体に応用することを前提として、ストロンチウムまたはカルシウムを投与するための担体について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
同時に遂行している基盤研究と同じ、使用期限が短い物品(遺伝子解析用試薬)を使用できたこと、また予定していた学会発表に応募が間に合わなかったことなどによる。
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次年度使用額の使用計画 |
生体応用を視野に入れた、試験管内での、未分化な細胞の調製や象牙芽細胞分化誘導についてさらに解析を進め、成果を発表する予定である。
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