研究課題/領域番号 |
26670835
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30379078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医学 / 歯学 / iPS細胞 / 骨組織再生 |
研究実績の概要 |
補綴歯科治療において,顎堤吸収により失われた骨の欠損部を補うための骨補填材料の需要は高まる一方である。現在,臨床に使用されている骨補填材には,化学的に合成されたリン酸カルシウム材料あるいはウシ由来の脱蛋白質乾燥骨等がある。しかしながら,これらの生体材料は,自家骨に比べて骨再生能が劣る上,術後吸収による再生骨量の減少等の問題があり,治療の予後は必ずしも良好ではない。また,動物由来の生体材料には未知の感染性因子が存在する可能性が完全には否定できないため,これらに代わる新たな骨補填材料の開発が望まれている。本研究では,患者自身の細胞に由来する自家骨成分に近「バイオミメティック骨再生剤」の開発を目的としている。本年度は,マウス歯肉由来iPS細胞の胚様体(embryoid body)を,骨芽細胞分化誘導培地中で特定の振盪培養条件を与えることで,浮遊させたままカルシウムを豊富に含む骨芽細胞の凝集体を作製する技術を確立した。また,大量に増殖させたiPS細胞を浮遊培養することによって大量の胚様体を形成させ,さらに振盪培養しながら骨芽細胞へ分化誘導することで,胚様体のサイズを大きくし,かつ含まれる石灰化物(カルシウム)の量を増加させることが可能であることを見出した。さらに,この胚様体を不活化して得られた材料は,骨組織に近似した成分組成を有していることを,フーリエ変換赤外分光法(FT-IR解析)によって明らかにした。この不活化したiPS細胞の凝集体をラット頭蓋骨欠損部に填入した結果,組織切片観察から良好な骨再生効果を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、iPS細胞を浮遊培養で骨芽細胞へ分化誘導することにより、カルシウムを豊富に含む骨芽細胞の凝集体を作製する技術を確立できているため。この技術は独自性を有するとともに、今後このiPS細胞由来骨再生剤が、骨再生能を有している可能性を検討していくために必須である。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験によりiPS細胞由来骨補填材の骨再生効果を検討する。骨欠損部の再生の評価にはラット頭蓋骨欠損を用いる。骨補填材を填入して,3~10週間後に組織を摘出し,骨再生を組織学的に評価する。立体的な骨形成および骨密度を,マイクロCTを用いて定量的に解析することで,垂直的な骨再生効果を評価する。また,iPS細胞由来骨補填材による骨再生効果の作用機序を解明するために,この補填材に含まれる成分を解析していく。以上の結果をもとに,iPS細胞から骨組織を誘導するバイオエンジニアリングの基盤を築き上げるとともに,次世代の骨再生剤の開発の芽生えにつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成26年4月に東北大学に異動したため、研究環境を整えるのに時間がかかり、研究計画を遂行するために必要な試薬の発注・納期が少し遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、iPS細胞を用いて試験管内で石灰化凝集体を作製する実験は計画通り順調に進んでいるため、この程度の使用額は次年度に要する予算と合わせて、動物実験や機構解析などを効率よく実験を進めるために必要であると考えている。
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