研究課題/領域番号 |
26670836
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 靖弘 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90281162)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インプラント / インプラント周囲炎 / ドラッグデリバリーシステム / DDS / 殺菌剤 / CPC / 濃度 / 会合 |
研究実績の概要 |
インプラント/歯肉接合部に薬剤を送達し,かつ,薬剤が低濃度の時のみ機能するドラッグデリバリーシステム(DDS)があれば,殺菌剤など為害性の強い薬剤も効果的に使用でき,インプラント周囲炎の予防・治療のブレークスルーになることは間違いない。しかし現在まで,薬物濃度を検知して機能するDDSは全くない。そこで本研究では,申請者が開発した多糖誘導体リン酸化プルランと殺菌剤CPCの複合体が,濃度変化に伴いイオン結合から疎水性相互作用へと会合状態を変えることに着目し,(1)インプラントの母材であるチタンへのCPC送達性ならびに(2)CPCとの会合体の構造変化と抗菌効果を検討することにより,濃度を検知して抗菌効果を発現するインプラント周囲炎の予防・治療薬創製を目指した。 170℃加熱あるいは試薬を用いた有機合成にてリン酸化プルランの合成を行い、物性とインプラント接着性キャリアとしての機能を比較した。試薬を用いた有機合成の方が過熱する場合に比べてリン酸化度や分子量を規格化しやすいこと、さらに、大きな分子量がえられる反面、水溶性は劣る。これが殺菌剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)と複合し、製剤化する上で問題であった。試薬を用いた有機合成で処理条件を検討したところ、リン酸化プルランの水溶性が向上し、濃度変化に伴うCPCとの会合状態変化も認められた。さらに、当該条件で合成されたリン酸化プルランCPC製剤は、従来法の試薬を用いた有機合成で得られたリン酸化プルランの最大の問題であった用時調整の短時間化につながることも明らかとなった。なお、詳細な合成条件や試薬名に関しては特許出願を検討中であり、あるいは、製品化時のノウハウとして非公開となりうる可能性も残っているため、本報告からは割愛する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
インプラント周囲炎は、現在、歯科が抱える大きな問題の一つとして取り上げられ、有効な予防法・治療法の開発が切望されている。そのような状況の中、本研究では、インプラント周囲炎の予防・治療薬開発に必要な知見の集積を目指し、(1)インプラントの母材であるチタンへのCPC送達性ならびに(2)CPCとの会合体の構造変化と抗菌効果を検討することとした。 これまで様々な方法でリン酸化プルランを合成したが、加熱法ではリン酸化度の調節が難しく、一方、試薬を用いた有機合成では水溶性に問題があった。これが、インプラント周囲炎だけでなく、他の用途でもリン酸化プルランを実用化する上での障害となっていた。現在、その解決策も見出されつつあり、萌芽的な研究として機能発現ならびに有効性確認を目標としてスタートした本研究にとって、実用化の道が開けたことは当初の予想以上であったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
実用化の見込める段階まで進展した本研究では、長期安定性など製品化に必要な条件についても検討していく方が望ましいと考えられる。当初、予定していた抗菌効果の確認すなわち有効性確認に加え、予算の許す限り実用化を想定した実験項目を追加していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたより、リン酸化プルランの合成等に掛かる費用を減じることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で使用していたディープフリーザーが故障し、実験に支障をきたしているため、その購入費用に充てる。
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