平成27年度までに、Kog1ペプチドがLPS刺激下で歯肉線維芽細胞の炎症性サイトカインおよびケモカインの発現に対して抑制的に働くことが明らかとなったため、平成28年度はその抑制メカニズムについて検討した。 Cathelicidin LL-37やHistatinなどの抗菌ペプチドは、エンドトキシンであるLPSの作用を中和することで、炎症性サイトカインの産生を抑制する。そのメカニズムの一つとして、抗菌ペプチドがLPSと結合することでLPS受容体への運搬を阻害することが言われている。 そこで本研究では、Kog1とLPSの結合能について、SPRを用いて検証した。自己組織化単分子膜を形成した金基板にKog1を曝露し、ペプチドの金基板への固定化を行った。その結果、ペプチドの結合量と対応するSPRシグナルの角度変化量は426 mDAとなり、コントロールであるHistatin 5の247 mDAと同様に、金基板への固定化が確認された。さらに、ペプチドが固定化された金基板にLPSを10分間曝露したところ、Kog1、Histatin 5ともにSPRシグナルの増加が認められた。また、LPS曝露時のSPRシグナルの角度変化量を測定することでLPSの結合量を比較したところ、Histatin 5に比較してKog1で角度変化量が増加、すなわちLPSとの結合量が増加した。 以上の結果より、Kog1はHistatin 5に比較してLPSとの結合性が高いことが示唆され、すなわちKog1はLPSと結合することでLPSの作用を中和し、歯肉線維芽細胞におけるLPSの炎症性サイトカインおよびケモカインの発現誘導を阻害する可能性が明らかとなった。
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