研究課題/領域番号 |
26670839
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
熱田 生 九州大学, 大学病院, 助教 (30423487)
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研究分担者 |
古谷野 潔 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50195872)
鮎川 保則 九州大学, 大学病院, 講師 (50304697)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / インプラント / 上皮封鎖性 |
研究実績の概要 |
本研究は歯科インプラントの口腔内での長期維持のため、インプラント周囲における上皮封鎖性の効率的な獲得と向上を目指す。ただしその方法は従来のような生体親和性の高い材料の開発ではなく、インプラント周囲組織から「正常」かつ「チタン親和性」の高い組織を誘導することにある。すなわち通常は異物として認識されうるチタン製インプラントを「微小環境(Niche)」として初期培養環境におくことで、幹細胞にインプラント自体を生体の一部と認識させようとするものである。このような「Niche」を幹とした概念は間葉系幹細胞(MSC)を用いてのみ応用可能である。さらに本研究は発想としての独創性だけで手技的には簡易であり、歯科だけでなく人工物を使用するすべての医療、さらには幹細胞を用いた細胞治療全般にも応用可能な技術と考えられるため,将来的には幅広い分野への貢献を期待できる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、in vitroにてチタンをNicheとしそこで教育されたMSCを作製。さらにin vivoでインプラント周囲での組織安定性を図ろうとするものである。そのため3種類のヒト歯肉を採取しチタン上でMSCを選択的に培養、それをラット口腔内へのインプラント埋入時または埋入後に添加するものである。そして実験の最終段階としてはインプラント周囲における軟組織および硬組織の慢性炎症の消失と、動物実験でも6割以上生じるインプラント周囲上皮深部増殖の抑制を組織形態的かつ生化学的に評価することにある。実験のタイムコースは2年間の予定である。現在1年目では「チタン周囲Niche」の作製:チタン表面でのBM培養とMSCの選択的抽出をおこなっており、培養系でその違いを明らかに出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究が順調に進んでいるため、今年度は次のステップに進むこととする。すなわち「ヒトMSC」の投与することにより、注入用MSCの作製とその効果の検討をおこなうものである。 同研究者はインプラント周囲上皮および幹細胞研究を長年続けている。本研究はこれらの技術を応用しているため、以下の実験に関し多少の試行錯誤は必要だが技術的には実現可能と考える。ちなみにMSCの投与方法として局所投与と全身投与がある。すでにマウスを使った我々の研究でMSCの局所および全身投与における作用時間、全身への影響などを評価している(Torb et al. 2006)。その結果どちらも治療効果はあるものの局所投与の有用性が明らかになった。しかし今回は術野などの条件から全身投与を選択した。
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次年度使用額が生じた理由 |
すべての研究が順調に進んだため、予定額よりも少なく新たな研究ステップに進むことが出来た。今後の研究内容によっては使用額の変更が予測されるため、細心の注意を払い研究費の使用を管理していく。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度も研究計画では、内容がin vivoおよびin vitroの双方にまたがる。そのため実験動物や培養に関連する消耗品が必要不可欠である。また現在の研究の最先端を知るとともに、今臨床の場で何が必要とされているのかを知る機会とする。さらに研究結果は年度毎に雑誌に投稿し、その分野の専門家達とより深い議論をすることができたらと考える。
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