研究課題/領域番号 |
26670844
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
阿部 俊之 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (80231116)
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研究分担者 |
橋本 和佳 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (90201706)
中川 昌好 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (70319200)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ショットブラスト / 研磨 / 歯冠補綴 / クラウン |
研究実績の概要 |
工業界で一般的に用いられているショットブラスト研磨法を、歯冠修復物の研磨に臨床応用する目的で検討をおこなった。 検討用試料は12%Au-Ag-Pd合金を鋳造して作製したクラウンに、ショット研磨を行なったものとした。 なおシリコンポイントを用いた従来の方法で作製した試料をコントロールにした。これらの試料の研磨状態を、本学の5名の歯科医がVisual Analog Scaleを使って評価した。統計分析にはKruskal-Wallis(P<.05)を使用した。また鋳造した12%Au-Ag-Pdのクラウンの研磨時間を、ショット研磨機を用いた方法と従来の方法とで比較した。 その結果,ショット研磨は、目視による観察で小窩裂溝を含むクラウンの研磨に有用であった。また従来の研磨方法は32分必要であるが、ショットブラスト研磨は2分以内という短い時間で従来の方法と差のない研磨を行うことができた。 さらに、鋳造したクラウンのマージン部のような鋭利な部分を想定した板状の試料を作製し、その辺縁部形態変形量を検討した。 その板状の試料は、18カラット金合金を鋳造して作製した。表面性状は異なる2種類に作製した。1つ目は、30秒の間サンドブラストで研磨したタイプで、2つめは、サンドブラストで処理した後、1分間ショット研磨機で研磨したタイプである。辺縁部短縮変形量は、基準線とエッジの距離を測定して検討した。 各々のタイプの試料数は5個ずつとした。 辺縁部形態変形量は、顕微鏡で観察した。測定したデータは、Student’s t-test(P<.05)で統計分析した。 その結果、辺縁部形態変形については、サンドブラストを行った試料とサンドブラスト後にショット研磨を行った試料間で、有意差は認められなかった。なお、このショット研磨によりクラウンのマージン部を想定した辺縁部分は、丸くなる傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には交付申請時に記載した研究計画を、概ね遂行した。 そしてショットブラストで研磨した場合の、研磨状態の検討について、査読のある原著論文「ショットブラストを応用したクラウンの研磨についての検討」と題して報告をした。 この論文中でも示すとおりショットブラスト法を歯科用金属材料に使用して研磨法の良否を検討した結果、表面を数μm研削するだけでクラウン形状を変えることなく、鏡面状態まで研磨可能であった。しかし、初年度は陶材やレジンに対しては、金属と同じ圧力や時間では十分な研磨結果が得られなかった。このため、これらに対しては今後、研磨時間や圧力および砥粒の当て方などの条件を変えて検討する予定である。 ショットブラスト研磨法は、シリコーンコアの周りにダイヤモンド砥粒を積層した弾性のある砥粒を用いることで、被研磨物表面を砥粒が滑走し、研磨効果を発揮する。またショットブラスト研磨機は、外観上はサンドブラスターと類似する。しかし、研磨材料の砥粒は、エアーを使用せずインペラーと呼ばれるブレードでクラウン等の歯冠修復物に対して吹き付けて使用する。 近年、歯冠修復物を製作する歯科技工士の高齢化は顕著で、また若年者の離職率も高い。このため歯科技工で、最も多くの作業時間必要とする研磨時間の短縮は必須である。このため本研究の途中経過が示すように、2分以内に研磨が終了するショットブラスト研磨法の研究意義は大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研磨面を一定に仕上げた様々な表面荒さの基準試料を作製し、それらの基準試料のどの荒さ以下から研磨完成とすべきかを、歯科医にビジュアルアナログスケールにて判断させて、研磨の基準値作りをおこなう。 当初は試料を手研磨にて作製し、その表面粗さを測定して基準試料とする予定であった。しかし、製作した使用は測定部位により表面粗さにばらつきが大きく認められた。そのため、自動研磨機リファインポリッシャー(リファインテック社)を使用し、酸化亜鉛等の研磨砥粒も市販の粒子径が判明しているものを使用し、歯科用鋳造用合金である金銀パラジウム合金の表面を、50μmから0.05μmまでの様々な表面の粗さ試料に作製する。これらの試料を利用して取得したデータをとりまとめ、その結果を学会発表および論文発表する。 また、26年度で検討したショットブラスト物の使用手順を基準に、試料用材料に陶材および硬質レジンを追加し検討を行う。 以上のようにクラウンなどの歯冠修復物を研磨するのに最も適したショットブラスト法を確立し、臨床で使用できるようにする。 本研究により、歯冠修復物作製において、技工士の技量に左右されない方法により、技工作業の効率化が行え、研磨工程を根本的に変えることができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表より論文作成を優先した。 このため,学会出張に使用する予定であった旅費分が,次年度に使用額を生じた理由である. なお論文はすでに発刊されている.
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次年度使用額の使用計画 |
2年目に行う研究結果を学会発表するために使用するとともに,論文に取りまとめて報告するための印刷代等に使用する.
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