研究課題
本研究では、歯根膜由来細胞における血管形成機能を発現するためと造血機能を発現するためのキー遺伝子をそれぞれ同定し、局所の血管新生と造血とを組み合わせた革新的な歯根膜周囲組織の局所循環改善技術の開発を進める。平成26年度は、二次元培養での歯根膜由来細胞による血管形成ならびに造血制御モデル遺伝子のピックアップ作業を開始した。とくに、最近我々は、歯根膜由来細胞による血管形成および血球系細胞への分化が低酸素培養下で今まで以上に強く誘導されることを新たに発見した。また、この低酸素条件下では、既に発見済みの血管形成・血球細胞分化誘導遺伝子Aを歯根膜由来細胞に強制発現した場合には、その血管形成促進能力や血球細胞分化能力がより顕著に観察されることも判明している。このように、新たに明らかとなった血管形成・血球細胞誘導培養条件のもとで、現在、これらの機能を発現するためのキー遺伝子の絞り込みを開始しているところである。加えて、最終年度(平成28年度)のin vivoでの歯根膜由来細胞における血管形成・血球細胞誘導機能発現キー遺伝子の同定実験では、移植細胞をトレーシングするための指標として蛍光色素を導入された幹細胞の動物への移植系を立ち上げる必要がある。今回我々は、間葉系幹細胞のなかではin vivoでの組織形成能力が高いとされる骨髄由来間葉系幹細胞に蛍光色素を導入し、in vivo移植後の組織形成能力を蛍光トレーシングにより可能とするためのポジティブコントロールとしての細胞を得ることができた。この成果から、歯根膜由来細胞を用いた血管形成・血球細胞能力のin vivoでの評価の際に今回作製した細胞との比較検討が可能になり、研究成果の評価が容易にできるという利点を得た。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、当初の予定通りに、歯根膜由来細胞における血管形成機能を発現するためと造血機能を発現するためのそれぞれのキー遺伝子のピックアップ作業を開始している。また、その際にこれまでの歯根膜由来細胞における血管形成・血球細胞分化能力をさらに誘導する細胞培養系の開発に成功しており、今後の上記キー遺伝子のピックアップや絞込みが容易となった。加えて、in vivoでのキー遺伝子の同定実験を容易にするためのモデル実験系の開発に着手しており、この実験を進める上での大きな利点を得た。
現在進めている歯根膜由来細胞における血管形成機能を発現するためと造血機能を発現するためのそれぞれのキー遺伝子のピックアップ作業を継続して進めるとともに、当初の研究計画通りに平成27年度には、ピックアップされた候補遺伝子の絞り込みを行い、最終年度(平成28年度)でのキー遺伝子の同定に繋げたい。
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Mol. Med. Rep.
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Nano Biomed.
巻: 6 ページ: 73-77