研究課題
我々の研究の最終目標への到達を目指し、歯根膜由来細胞における1)血管形成機能を発現させるため、2)造血機能を発現するためのそれぞれのキー遺伝子を同定し、局所の血管新生と造血とを組み合わせた歯根膜周囲組織の局所循環改善技術の開発を進めている。平成27年度は、前年度からの二次元培養に加えて新たに三次元培養を用いて歯根膜由来細胞による血管形成ならびに造血制御モデル遺伝子のピックアップ作業を実施した。具他的には、昨年度我々が開発した低酸素培養法における歯根膜由来細胞による血管形成および血球系細胞への分化誘導技術を利用して既に発見済みの血管形成・血球細胞分化誘導遺伝子Aに加えてその他の血管形成・血球細胞分化誘導遺伝子のピックアップ作業を多次元的な培養法を用いて実施した。一方、次年度に予定しているマウスを用いた歯根膜由来細胞における血管形成・血球細胞誘導機能発現キー遺伝子の同定実験では、蛍光ラベルされた歯根膜由来細胞の移植系の樹立が必要とされる。我々は昨年度に、緑色蛍光色素を強発現する間葉系幹細胞株の樹立に成功しており、そのin vivo移植後の血管組織形成能力についてリアルタイムに評価するための評価系を得ている。加えて、我々は今年度新たに赤色蛍光色素を強発現する間葉系幹細胞培養系を樹立して報告した。これらの成果は、歯根膜由来細胞を用いた血管形成・血球細胞分化能力のin vivoでの評価の際、そのポジティブコントロール実験に用いる細胞として緑色蛍光あるいは赤色蛍光を発現する両方の幹細胞が利用可能になったことを意味する。この研究成果により、将来的に作製される血管形成・血球細胞分化誘導遺伝子が強発現された歯根膜由来細胞の蛍光ラベルが赤色あるいは緑色いずれであっても、それに対応するポジティブコントロール細胞が得られているので、次年度におけるin vivo実験が容易になった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、昨年度から引き続き歯根膜由来細胞における血管形成機能を発現させるためと造血機能を発現するためのそれぞれのキー遺伝子のピックアップ作業を継続している。加えて、in vivoでのキー遺伝子の同定実験を容易にするためのモデル実験系の開発、すなわち昨年度までの緑色蛍光強発現間葉系幹細胞株に加えて赤色蛍光強発現間葉系幹細胞株の樹立に成功した。その結果、次年度(最終年度)に予定している歯根膜由来細胞における血管形成・血球細胞誘導機能発現キー遺伝子の同定実験が容易に行えるような準備ができた。
最終年度(平成28年度)においては、現在継続中の歯根膜由来細胞における1)血管形成機能を発現させるため2)造血機能を発現するためのそれぞれのキー遺伝子のピックアップ作業を終了させ、且つピックアップされた候補遺伝子の絞り込みを行うとともに、歯根膜由来細胞における血管形成・血球細胞誘導機能発現キー遺伝子の同定作業を進める。
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