研究課題
今回我々は、歯根膜由来血管内皮前駆細胞endothelial progenitor cell (EPC)が局所の血管新生を促進して歯周組織再生に働く際に、同時に周囲損傷神経の再生にも働く可能性を見出した。すなわち、歯根膜由来EPC様細胞として樹立されたSCDC2細胞にtransforming growth factor (TGF)-βを作用させると神経栄養因子として知られるnerve growth factor (NGF)の発現が誘導されることが判明した。近年、血管と神経はお互いに作用を及ぼし合いながら協調的なネットワークを形成することが明らかとされているが、とくにこのネットワークの形成に働く「神経-血管ガイダンス分子」の存在が注目されている。これまで、この神経-血管ガイダンス分子は、神経細胞の機能を調節する分子として注目されてきたが、血管網の形成にも重要な役目を演ずることが最近明らかとされ、歯周組織再生に欠くべからざる神経組織と血管組織形成を誘導するものとして重要視されてきている。今回の我々の発見は、歯根膜細胞由来のNGFが、歯根膜に達する感覚神経の損傷時に神経-血管ガイダンス分子として働き局所での神経組織再生に働くと同時に、その再生された神経組織から産生される神経-血管ガイダンス分子による血管組織再生の可能性を予測させるものである。現在、SCDC2細胞が血管形成ならびに造血能力を発現させるキー遺伝子の同定に向けての研究を進めているところであるが、今後は、歯周組織における神経-血管ネットワーク形成を司るキー遺伝子についても同定を試み、神経-血管ネットワーク形成を応用した局所の微小循環増強作用による革新的な歯根膜周囲組織の再生医療の開発に繋げたい。
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