本研究の目的は、骨密度の低い高齢者などにも適応可能な機械的特性を持つ骨補填材料の創成であった。 平成26年度において、以下の実験を行った:1. 様々な形態のオクタカルシウムリン酸塩(OCP)結晶を作製した。X線回折法により結晶相を同定し、光学顕微鏡とSEMにより結晶形態を調べた。2. 得られた結晶を金型(内寸2x10x5mm)に充填し、200MPaで30分間加圧して成形体を作製した。3. 3点曲げ試験を行い、曲げ挙動、曲げ強さ、ヤング率、靭性、最大ひずみ率を求めた。4. 加圧成形体の内部構造をSEMにより、結晶の配向状態をX線回折法により調べた。 これにより次の結果を得た。この加圧成形体は、最大応力に達した時のたわみ量が大きく、最大応力に達した後に継続して応力をかけても破断しない、という特徴があった。曲げ強さと靭性の間には、正の相関があり(R=0.98)、Young率と最大ひずみ率の間には負の相関があった(R=0.95)。大きい板状結晶から成る成形体では、結晶が大きい程、板状結晶が配列した積層構造になっていた。強度とYoung率は小さいが、最大ひずみ率は26%と非常に大きかった。これは、積層構造では加えた応力が分散され、抗応力が大きくなるためと考えられた。一方、表面に小さな結晶が成長している微細粒子を用いた場合、成形体のYoung 率は大きく、最も脆性的な曲げ挙動を示した。しかし、最大ひずみ率は10%で、皮質骨の最大ひずみ率(2%)よりも大きい値であった。これは、微細粒子の表層の小さな結晶同士の勘合効果によると考えられた。 これらのデータに基づき、結晶形態と成形体の内部構造・力学特性の関連を検討した結果、様々な結晶形態を用いて任意の内部構造を持つ成形体を構築することにより、所望の機械的特性を持つ成形体を作製できると結論された。
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