研究課題/領域番号 |
26670861
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川尻 秀一 金沢大学, 医学系, 教授 (30291371)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 浸潤 / 転移 / 血管 / リンパ管 / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
26年度は特に口腔癌の浸潤過程における腫瘍間質および血管・リンパ管新生について検討した。本年度は以前の報告において最も高浸潤・高転移性を示したOSC-19 細胞と高悪性の浸潤様式4D型癌から樹立されたOLC-01細胞を用いて、ヌードマウスの口腔内に移植し、移植後経時的にマウスを採取して、その間質および血管・リンパ管像を観察した。通常の病理組織切片での腫瘍間質および血管・リンパ管像の観察以外に、血管・リンパ管の観察のため血管とリンパ管をそれぞれ染め分けることが可能なALP-5’nase2重染色法を用いた。すなわち、ALP-5’nase2重染色法は、新鮮凍結切片を作成後、4%パラホルムアルデヒドにて40分間固定、5’nase 染色液に37℃60分間浸漬し、硫化アンモニウムにて発色、その後アルカリフォスファターゼにて後染色する。この方法では、血管とリンパ管が明瞭に識別されることが判明した。また、血管内皮細胞に特異的なCD31、CD34 抗体、リンパ管に特異的なLIVE-1 抗体やD2-40 抗体を用いた免疫染色法による観察も行った。同部位の薄切切片を同時に作製し、腫瘍の性状と血管・リンパ管の構築を交互連続切片で比較検討し、経時的な腫瘍と血管・リンパ管の変化を詳細に調査した。また、繊維芽細胞増殖抑制剤のin vitro における効果をMTT アッセー法にて検討した。さらに、癌細胞の浸潤像と間質の増生との関係について解析をおこなった。また、アザン染色を行い間質コラーゲン量の変化を検討するとともに、間質中の線維芽細胞の性質の変化についても検討した。これらの線維芽細胞はα-SMA を発現することから、筋線維芽細胞の存在を疑っている。現在は線維芽細胞による癌細胞の浸潤に対する影響について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は当初の計画と比較して、おおむね順調に進行していると思われる。ただし、26年に予定していた墨汁還流法による、血管の立体的構築像の観察は行わなかった。この方法では血管を立体的に観察できるが、その他のリンパ管や間質の線維芽細胞との関係は観察できない。したがって、本年度はALP-5’nase2重染色法や免疫組織化学染色で腫瘍と血管、リンパ管や間質の線維芽細胞との関連を中心に研究を行っている。27年度以降に詳細にこれらの関係を検討し、必要があれば墨汁還流法による、血管の立体的構築像の観察も行うことにしている。
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今後の研究の推進方策 |
27年度以降はさらに、浸潤能の異なる癌細胞を加える予定であり、浸潤能の違いが間質や血管構築に与える影響を観察する。すなわち、以前のモデルに関する報告において浸潤能の低い細胞であった、OSC-20 細胞を用いて26年度と同様の研究を行い、OSC-19 細胞、OLC-01細胞を用いた結果と比較検討する。この結果から、癌細胞の浸潤転移能と間質増生や血管新生との関係についての結論がでると思われる。また、血管数のみならず、血管の大きさ(面積)や形態による観察も行う予定である。また、血管の新生は腫瘍の増殖と最も関連するという報告もみられるので、増殖細胞核抗原(PCNA)抗体、上皮成長因子(EGF)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)抗体を用いて免疫染色し検討する予定である。すなわち、移植後に血管の新生が観察される前後で間質増生や腫瘍の増殖能に変化があるのであろうか。また、血管新生の旺盛な細胞の増殖能が高くなるのか否かを検討する予定である。また、線維芽細胞の性質の違いについての検討も同様に浸潤能の異なる癌細胞を加える予定であり、筋線維芽細胞の浸潤に与える影響について詳細に検討する。また、27年度からはリンパ節転移との関係についても検討する。その後、繊維芽細胞増殖抑制剤、血管新生阻害薬による浸潤や転移の阻止実験をin vivoのモデルで行い、浸潤や転移における腫瘍間質および血管新生の意義について明らかにしていきたい。
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