血管新生阻害剤(アバスチン)の腫瘍増殖や浸潤・転移に対する抑制効果をin vivoの浸潤・転移モデルを用いて検討した。高浸潤性のヒト口腔扁平上皮癌細胞株のOSC-19細胞(浸潤様式4C型)をヌードマウスの舌に移植した後に、薬剤を投与した。その結果、移植腫瘍の大きさの平均はコントロール群と血管新生阻害剤投与群では差が認められなかった。しかしながら、リンパ節転移に関してはコントロール群が8匹中8匹(100%)の転移率に対し、血管新生阻害剤投与群では9匹中4匹(44%)の転移率で、転移抑制効果が認められた。病理組織像で移植腫瘍が血管新生阻害薬を投与することで浸潤様式4C型や3型にダウングレードする傾向は認められなかった。しかし、癌細胞の細胞増殖活性を観察するために増殖細胞核抗原PCNA抗体を用い免疫染色を行ったところ血管新生阻害薬投与群で陽性率が低い結果であった。また、血管とリンパ管をCD34抗体とNZ-1抗体でそれぞれ免疫組織化学染色した。その結果、血管密度・リンパ管密度のいずれも、血管新生阻害剤の投与で減少していた。また、腫瘍移植後のマウスの体重減少は、血管新生阻害剤投与群が低かった。以上の結果から、口腔癌モデルにおいて、腫瘍周囲の血管新生を抑制することでは腫瘍そのものに対する増殖抑効果は低いものの、リンパ節転移が抑制された。また、本研究で、線維芽細胞増殖抑制剤による、リンパ節転移抑制効果も観察されている。したがって、高転移性の癌には血管新生阻害剤や線維芽細胞増殖抑制剤など、腫瘍間質を抑制する薬剤が治療に有効である可能性が示唆された。
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