研究課題/領域番号 |
26670862
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
柴田 敏之 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50226172)
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研究分担者 |
川口 知子(武田知子) 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (30509815)
飯田 一規 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (30585237)
玉置 也剛 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40585303)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | iPS細胞 / がん化 / ヒト歯髄細胞 |
研究実績の概要 |
再生医療の分野でiPS細胞が開発され研究展開されているが、良いiPS細胞と悪いiPS細胞(がん化)の問題が生じている。本研究の最終的な狙いの一つとして、良いiPS細胞を得るためにがん化を検討することにある。その結果、ヒト歯髄幹細胞(Dental Pulp Stem Cell: DPSC)からのiPS細胞誘導効率促進およびがん化しないiPS細胞誘導を解析する過程に於いて、細胞初期化直後の上皮系marker (E-cadherin)の発現増強(上皮間葉転換:EMT)とRLX4(TGFβのシグナル伝達に係わる因子:TGFβはEMTに係わることが知られている)の発現が初期化に深く関与し、がん悪性形質獲得にも類する現象を見出して来ている。即ち、iPS細胞誘導効率を支配する新たな因子(DLX4)は、高発現している細胞ないし強制発現させると誘導効率が有意に向上し、良質化(形態の整ったコロニーの出現)も得られることが示された。また、このDLX4はヒト歯髄細胞のみならず広くiPS細胞研究に用いられているヒト皮膚線維芽細胞でも同様の作用を示すことが示された(Science report 2014)。 DLX4は詳細について不明の部分も多いが、上皮間葉転換に深く関わるTGFβのシグナル伝達に関与することが示されて来ている。そこでTGFβ刺激下でiPS誘導を行った所、有意な誘導効率の低下を観察した。また、細胞間のsmadシグナルを調べた限りでは、差はなく、DLX4はTGFβシグナルの他の経路に関与している可能性を得た(結果未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目標である「ヒト歯髄細胞からiPS細胞を経由した発がん証明」に関する直接的な検討には、本年度は到達していないが、発がんの逆である良質なiPS細胞誘導の検討は進み、良質なiPS細胞形成には、がん悪性化進展に重要な役割を果たしている上皮間葉転換の逆である間葉上皮転換が重要であり、正に表裏一体の関係にあることが見出された。また、がん化・悪性形質獲得に大きな作用をするTGBβおよびそのシグナル伝達物質DLX4がiPS細胞誘導効率・良質化(がん化阻止)に大きな役割を果たしていることが示された(Scientific Reports 2014)。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は、本研究課題の最終年度であることより、iPS細胞のがん化Vs良質化の表裏の関係を検討することに加え、がん細胞の培養上清(がん細胞の分泌因子)によりiPS細胞ががん化傾向を増すか否か、各組織切片(凍結切片)上でiPS細胞を培養すると該当する各組織に類似した形態の細胞に分化するか否か(周囲環境因子によるiPS細胞の分化様式の検討)に移り、当初の計画に沿った研究を行う(特に、本年度の検討により良いiPS細胞=再生医療資源、悪いiPS細胞=がん の関係が示されたので、確度の高い展開を期している)。
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