研究実績の概要 |
本年度においては、フィーダー細胞を用いずに無血清培地(hESF9)で、健常人歯髄細胞(DPC)、健常人末梢リンパ球(PBMC)及び頭蓋顎顔面骨・軟骨・歯胚形成異常を伴う鎖骨頭蓋異形成症(CCD)患者由来DPCおよびPBMC由来ヒトiPS細胞(iPSC)を樹立し、各細胞の特性解析を行った。DPC、PBMCはそれぞれRD6F及びRD6F+IL2で初代培養し、初期化遺伝子の導入は、ゲノムDNAへランダムな遺伝子挿入が起こらないセンダイウイルスベクター(SeVdp (KOSM)を用いて行った。DPCからのiPSCの樹立には細胞接着因子としてフィブロネクチンが最適であったが、PBMCにはラミニンが最適であった。各hiPSCではSeVdpの残存は認めず、完全に除去されていることが明らかとなった。 健常人及び疾患由来のいずれのiPSCもin vitroにおいて未分化マーカー遺伝子(Oct3/4, Nanog, Sox2, Rex1)および蛋白(Oct3/4, Nanog, SSEA4, Tra1-81)をRT-PCR法および蛍光免疫染色法にて発現していた。また、多分化能をembryo body 形成法にて分化を誘導したところ、Nestin, Microtubule-associated protein 2, α-smooth muscle actin, Alpha-fetoprotein遺伝子および蛋白(Nestin, MAP2, αSMA, AFP)を発現し、3胚葉への分化能を示した。 マウス皮下への移植によるテラトーマ形成能を検討したところ、健常人由来iPSCでは3胚葉への分化を示し、その組織像は正常であった。しかしCCD-iPSC由来テラトーマも3胚葉への分化を示したものの、CCD-hiPSC由来テラトーマにおける軟骨組織は、軟骨基質が疎であり疾患の特徴を反映した組織像を認めた。
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