研究課題
近年、種々の悪性腫瘍おいて liquid biopsy (体液生検) すなわち血漿中の腫瘍由来遊離 DNA (ctDNA) の塩基配列を決定し、腫瘍遺伝子変異を検出することが試みられている。本研究では、口腔扁平上皮癌における liquid biopsy の可能性を検証することを目的とした。早期および進行口腔扁平上皮癌患者の原発腫瘍組織、隣接正常組織、血漿、白血球よりそれぞれ DNA を抽出し、10 ng の DNA から AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2 を用いて次世代シーケンシングのためのライブラリーを作成した。つづいて、Ion PGM/Ion 318 v2 チップおよび Torrent Variant Caller/Ion Reporter を用いて 50 種類の癌関連遺伝子の 2790 種類の変異の有無について解析した。平均リード深度は約 5,000 であった。その結果、早期および進行口腔扁平上皮癌患者原発腫瘍からは TP53、PIK3CA に腫瘍特異的変異が検出された。しかしながら、ctDNA から腫瘍特異的遺伝子変異が検出されたのは進行口腔扁平上皮癌患者のみであった。ただ、その変異検出率は 0.2% と極めて低値であったことからデジタル PCR 法を用いて再解析を行ったところ、腫瘍特異的遺伝子変異が確認された。以上の結果より、liquid biopsy は進行口腔扁平上皮癌に対してのみ可能であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
口腔癌患者血漿由来 DNA から腫瘍特異的遺伝子変異を検出する方法論を確立した。
口腔扁平上皮癌患者より手術前後、追加治療有りの場合はその前後、治療後 3 か月間隔、再発時はその治療の前後に時系列で血漿を採取する。また、手術標本より癌部および正常部組織を採取する。各検体より DNA を抽出し、本年度に確立された方法にて腫瘍遺伝子変異の経時的変化を検出する。
研究に必要な物品等を計画的に購入したが、次年度使用額がわずかに生じた。研究は計画どおり順調に進捗しており、次年度に必要な物品等を使用することとした。
研究計画に沿って適切な物品等を購入予定である。
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PLoS ONE
巻: 9 ページ: e110378
doi: 10.1371/journal.pone.0110378