研究課題/領域番号 |
26670868
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森山 雅文 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20452774)
|
研究分担者 |
竹下 徹 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50546471)
中村 誠司 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60189040)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 次世代シーケンサー / LH-PCR法 / 口腔カンジダ症 |
研究実績の概要 |
われわれの過去の研究では、 length heterogeneity (LH)-PCR 法を用いて口腔カンジダ症にはC. albicans だけではなくC. dubliniensisなどの真菌も病態形成に関与していることを見いだした。しかし、従来の LH-PCR 法では internal transcribed spacer 領域の断片長により真菌種を同定するために、未同定の真菌シグナルが検出された場合はクローニング後にシーケンスを必要であり、猥雑な操作が必要であった。しかし最近では、次世代シーケンサーという新しい解析方法が開発され、従来の方法では見逃していた低発現量の遺伝子転写産物の補足や同時にシーケンスも可能になった。そこで本研究では、この次世代シーケンサーを用いて口腔内真菌叢の解析を行い、また従来のLH-PCR法との解析結果とも比較検討を行った。 当科外来を受診したカンジダ症患者と健常者を対象にして、無菌生食5mlを30秒間含嗽してもらい、これを検体として採取した。次世代シーケンサーでの解析・同定にはこれまでの我々の研究で得られたシーケンスの解析結果を基にして口腔内真菌のデータベースを作成した。未同定のものについてはBLAST nucleotide algorithmを用いて真菌種を検索した。新規に同定された場合はデータベースに追加した。 その結果、LH-PCR法および次世代シーケンサーのいずれにおいても主な真菌の割合は同様の結果を示した。しかし、検出菌種数は次世代シーケンサーの方が有意に多かった。次世代シーケンサーの解析結果では、健常者群はC.albicansの割合が最も多く、高齢になるにつれ真菌種数が増加する傾向がみられた。一方、患者群でもC. albicansの割合が最も多かったが、総真菌種数は健常者群に比べて有意に多かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LH-PCR法の研究成果はPloS Oneに今年度掲載された。また、次世代シーケンサーではLH-PCR法より多くの菌種を認めており、さらなる原因真菌の同定に有用であると考えられる
|
今後の研究の推進方策 |
1) 口腔カンジダ症患者における治療前後の真菌叢の変化 口腔カンジダ症患者の抗真菌薬(フロリードゲル)による治療前後で検体を採取し、真菌叢の変化を検討した。その結果、治療前が治療後に比べて、平均検出真菌数、平均真菌量ともに有意に多かった。また、治療前に高頻度に検出されたC. dubliniensis や未同定の真菌(613bp)は、治療後にはほとんど検出されなかった。このことから、口腔カンジダ症の原因真菌としてC. dubliniensis や未同定の真菌(613bp)の可能性が高いことが示唆された。また、真菌叢の多様性も発症・増悪に関与していることが考えられる。
2) 次世代シーケンサーを用いた未同定真菌の同定と真菌叢のより正確な解析 実験1)~3)で病原真菌として抽出された真菌のうち、未同定ものについては、次世代シーケンサーにて塩基配列を解読し、BLAST nucleotide algorithm を用いてnucleotide collection database から該当する塩基配列に相当する真菌種を検索して、口腔カンジダ症の原因真菌の同定を行う。さらに、この次世代シーケンサーは、LH-PCR 法より解析できるLength が長くない(200~400 bp)が、LH-PCR 法よりも正確かつ高感度で真菌叢の解析も可能であるため、LH-PCR 法で口腔カンジダ症の発症や増悪に関与することが示唆される真菌をある程度抽出して、このシーケンサーに適応できるLength を設定して、検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーのプライマー作成の費用として10万円の予算(H26 3月)を予定していたが、検索するITS領域を実験の結果で急遽変更することになったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
ITS領域が決まり次第、プライマー作成を依頼・購入する予定である。
|