研究課題
口腔は身体の他の部位に比べ、多様な化学・機械・温度刺激に曝されている。ゆえに粘膜が損なわれ、傷ができることも少なくない。その一方で口腔粘膜は再生能力が高く速やかに治癒し、瘢痕も生じにくいことが知られているが、その理由は明らかとはいえない。私たちは、口腔内の温度が皮膚表面よりも高いことに着目し、33℃以上の温度で活性化されることが知られているカルシウム透過性イオンチャネルであるTRPV3チャネル (transient receptor potential vanilloid channel)に着目した。マウス口腔上皮細胞は温度感受性を示すことがわかり、さらに、TRPV3遺伝子欠失マウスおよびTRPV4遺伝子欠失マウスでは温度感受が抑制されることから、口腔上皮細胞の温度の感受にはTRPV3およびTRPV4チャネルが関与していることを確認した。TRPV3遺伝子欠失マウスから採取した細胞でより温度感受の抑制が大きかったことから、口腔上皮での温かい温度の感受にはTRPV3の関与が強いことが示唆された。さらに、生理的な意義をあきらかにするために、マウス臼歯を抜歯する創傷モデルで治癒期間の比較を行った。TRPV3遺伝子欠失マウスでは野生型マウスよりも創部の治癒が遅延していたことからTRPV3が創傷治癒に関わる事を見出した。さらに、口腔上皮細胞を異なる温度で培養したところ、37℃培養時では31℃培養時よりも増殖が活発になった。また、TRPV3の活性化薬であるcarvacrol を培養時に添加すると増殖が活発になった。これらの反応はTRPV3遺伝子欠失マウスから採取した細胞では認められなかったことから口腔上皮の増殖にTRPV3が関与していることもわかった。これらのことより、口腔上皮はTRPV3を介して細胞増殖および創傷の治癒を促進していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りに進み、論文を発表した。
創傷治癒促進の温度条件および薬剤の投与方法を検討する予定である
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FASEBJ
巻: 29 ページ: 182-192
10.1096/fj.14-251314.