研究実績の概要 |
4つの口腔癌培養細胞株(HSC-2,HSC-4,SAS,HO-1-u-1)を用いて、がん細胞の代謝調節の解明を行ってきた.とくにがん微小環境では治療抵抗性を示す細胞群が混在しており既存の薬剤との併用療法を検証している.1.細胞増殖能の解析(CCK-8 Assay):放射線照射(2Gy/day, 計6Gy)とCisplatin(CDDP)および2-Deoxy-Glucose(2-DG)で処理し, それぞれの細胞増殖能を解析した. HSC-4株ではCDDPと比較し, 2-DGの併用を行った群で糖代謝を阻害し,有意に細胞増殖能を抑制できる可能性が示された. 一方HSC-2では, 放射線照射とCDDPと2-DGの併用でも細胞増殖の制御が困難な状況であるため,解糖系の代謝産物が放射線防護に働く関与する可能性が考えられる. SAS,HO-1-u-1株については,放射線照射単独とCDDPや2-DGの併用と比べ, 細胞増殖能には有意な変化は認めなかった.2. DNA修復能の解析: 放射線により誘発されるDNA損傷の修復能をDNA重鎖切断の指標であるγ-H2AXの発現変化(30分,1時間,2時間後)を経時的に,western bottingにて解析した. HSC-2株ではγ-H2AXのシグナルが強く,ほとんどのDNA損傷は放射線照射早期に起こりDNA修復されることが明らかとなった. また2-DG添加による糖代謝制御は, HSC-2のDNA修復に影響を与えなかった. 3. アネキシンV-PI染色によるアポトーシスの解析: HSC-2のDNA修復に対し, PARP阻害薬を併用したところ, アポトーシスが誘導されたことから, 獲得された放射線耐性の解除に有効であった.
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