研究課題
ドライバーがん遺伝子とは、がんにおけるゲノム変異のうち、直接がんの進展を導くものである。がんは診断時には既に数十以上の遺伝子変異を持つことが多いが、一部のドライバーがん遺伝子を除いて、そのほとんどは直接増殖上の優位性には関与していないパッセンジャー遺伝子である。つまり、ゲノムの不安定性というがん細胞の重要な特徴の一つから引き起こされるものであり、ドライバーがん遺伝子変異に伴い細胞内で偶然生じたもので直接がんの発生、増殖や進展には寄与しない。従って、どの変異がドライバーがん遺伝子変異であるかを判定することは極めて重要であり、ゲノム解析と遺伝子異常の機能解析を平行して行うことが分子標的治療薬の早期開発に不可欠である。まず口腔扁平上皮癌細胞株や、患者由来検体を使用し、発現の増強や減少などを調べ、YAPの遺伝子変異や増幅または機能異常があるかを調べた。YAPは、脱リン酸化に伴いOncogeneとして活性化されると、細胞質から核に移行する。ティシュマイクロアレーを用いた実験ではYAPが核内で染色された口腔扁平上皮癌細胞は全体の10%程度であった。YAPはCTGF遺伝子を活性化するが、口腔扁平上皮癌細胞では、両者の発現がオーバーラップすることはまれであった。CTGFプロモーターにはYAP・TEADの結合サイトがあり、293細胞を用いたin vitroの実験では直接の活性化が認められ、悪性中皮腫でも発現に関連性があったが、100%発現が重なるわけではなく、口腔扁平上皮癌でも、CTGFの発現には他の因子の関与がより大きくなることが推察された。今後はCTGFに関してたんぱく質レベルでの制御にどのような因子が関わっているのかを探索したい。
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Oncogene
巻: 34 ページ: 73-83
10.1038/onc.