研究実績の概要 |
ホルモンや唾液分泌、免疫など多くの生理機能には約24時間周期の概日リズムが存在する。近年の研究により炎症反応は概日リズムを示すことが知られており、歯髄炎など口腔領域の炎症にもリズムがあることが予想される。本研究では歯髄など細胞内のリズムを調べることを目的に、炎症応答分子Mitogen-activated Protein Kinase(MAPK)や時計遺伝子の変化をリアルタイムでモニターできる蛍光バイオセンサーを新規作製した。 二量体を形成し、様々な遺伝子を周期的に転写促進する時計遺伝子BMAL1およびCLOCKにそれぞれ蛍光タンパク質を結合し、両者の近接をフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)にて判定した。FRETは2種の蛍光タンパク質を利用して、目的分子の構造変化を色(波長)の変化により見ることができる方法である。この結果、BMAL1-CLOCK二量体形成に概日リズムがみられることが明らかになった。またこれまで核以外の局在が知られていなかったCLOCKの小胞体への集積が観察された。 MAPKファミリー分子であるERK1, JNK1の活性化ドメイン配列を改良型FRETシステムに組み替えたバイオセンサーを作製し、これらを安定発現する線維芽細胞株を樹立した。このMAPK安定発現細胞に対し様々な時刻に炎症を模倣した刺激を行うと、FRETで示されるMAPKの応答には時刻依存性が見られた。このことから炎症応答には、その細胞自体の内因性概日リズムに起因する日内変動が存在することが示唆される。 以上の結果の一部を日本生理学会や歯科基礎医学会にて発表した。また次回の歯科基礎医学会にて講演を行う予定である。 現在、培養マウス歯髄細胞に作成したバイオセンサーを導入し、より生体に近い環境での炎症応答リズムの解析に挑戦中である。
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