研究課題/領域番号 |
26670880
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福本 敏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30264253)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯の再生 / 上皮ー間葉相互作用 |
研究実績の概要 |
これまで歯の再生は、人工的に歯胚を作製し、その人工歯胚を移植することでの再生が試みられてきた。しかしながら、この手法においては、1)胎児由来細胞の利用による倫理的な問題、2)大型器官の再生が困難(血管構築ができないため)、などの問題が存在することから、マウスなどの小型動物での再生歯できても、ヒトへの応用が難しい。我々は、1)の問題を解決する為に、iPS細胞からのエナメル芽細胞、象牙芽細胞の誘導技術を開発し、また乳歯由来歯髄細胞を、歯髄幹細胞に人工的に誘導する薬剤の同定に成功してきた。しかしながら、2)の問題を解決するには至っていない。 そこで我々は、これまで行なってきた2次元培養をさらに発展させ、歯原性上皮細胞の3次元培養システムを確立し、歯原性上皮細胞の分化について評価を行なった。まずは、ラット由来歯原性上皮細胞株SF2細胞を、スフェアを用いた3次元培養を行ない、これまでの2次元と分化の違いによる評価を行なった。RT-PCRによるエナメル芽細胞分化マーカーの発現を検討した結果、アメロブラスチン、アメロジェニン、エナメリンの発現に関しては2次元培養と比較して5倍以上の発現の上昇を認めた。さらに、3次元培養における細胞内でのアメロブラスチン発現を免疫組織学的に検討した結果、3次元培養のすべての細胞においてアメロブラスチンが発現していることを確認した。次に、石灰化培地において3次元培養の細胞の石灰化をvon kossa染色を用いて検討した結果、3次元培養のほうがvon Kossa染色による染色の増強が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に関しては、人工的な上皮陥入モデルを作成し、歯原性上皮細胞分化誘導における各種分化段階のマーカー発現のスクリーニングを実施する予定であった。しかしながら、我々の用いた3次元培養においては、最終分化段階のマーカーであるエナメル基質(アメロブラスチン、アメロジェニン、エナメリン)の発現上昇が認められ、当初はそこまでの分化誘導は様々な工夫が必要であろうと考えていたが、予定よりもスムーズに目的を達することができた。一方、3次元培養における分化の途中段階の遺伝子発現の包括的なスクリーニングを実施できておらず、もう少し短いタイムコースでの分化確認が必要であると考えられる。したがって、歯原性上皮の分化誘導に関しては、当初の計画以上に進展が認められたが、その途中過程の分化スクリーニングがやや遅れてると評価でき、総合的には概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度においては、平成26年度に達成できなかった、3次元培養上皮における力学的なストレス付与の効果判定を行なう。さらに、培養した上皮細胞を細胞シート化し反転させ、細胞の上面を細胞進展側に基底膜側を上方に位置し、細胞進展装置は細胞付着面をすでに進展させた状態で保持する。その上にI型コラーゲンゲルと歯原性間葉細胞(マウス由来mDP細胞)を培養し、3次元培養をおこなう。そののち、細胞進展装置の進展力を解除することで、上皮細胞表面の中心に圧縮力を付与し、上皮細胞のapical側とbasal側との細胞面積を改変することによる上皮細胞極性制御を行なう。 上記の培養法で培養した上皮細胞での、進展力解除前後におけるshh、Wnt10aの発現についてReal-time PCRにて確認する。またショウジョウバエで陥入部位において発現の確認されているミオシン関連分子群の発現変化も確認する。 追加として、3次元培養におけるエナメル上皮の分化メカニズムの解明の為に、どのシグナル伝達機構が関わっているかを判断する目的で、小分子化合物ライブラリーを用いた、分子シグナルスクリーニングを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した実験計画よりも、少ない実験で研究成果が得られた。その結果、当初予定していた包括的な遺伝子スクリーニングなど比較的予算規模の大きい研究が本年度に実施することができなかった(当初予定していた実験のスケジュールでは分化誘導に長期間有する予定だったが、短期間で分化誘導が可能となったので、その途中過程での遺伝子スクリーニングのタイムスケジュールに変更が必要となった)。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画において、各分か段階における評価のポイント設定を短くし、より詳細な包括的な遺伝子スクリーニングを実施する。そのため、平成26年度で実施できなかった同様の研究(マイクロアレーや次世代シークエンスを用いた包括的遺伝子解析)を平成27年度に計画する。
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