研究課題
本研究は歯を作る神経堤由来間葉系幹細胞に着目し、歯の形成に重要な遺伝子をスクリーニングすることを目的として研究を開始した。胎生8日齢 (E8)マウス胚から将来下顎となる第一鰓弓を含む神経管の器官培養法を確立した。このシステムを用いて神経管近傍にある神経堤由来細胞のトレーシングを行うと、細胞群が第一鰓弓へと遊走している様子が観察された。これら細胞群の中に歯の形成に重要な細胞が含まれていることが考えられる。また、E14マウス臼歯歯胚の陥入上皮直下にある間葉細胞を取り除き、器官培養を行うと、歯胚形成が抑制されることを発見した。そこで、陥入上皮直下の間葉細胞とその周辺の間葉細胞とをマイクロアレイ法にて比較したところ、陥入上皮直下の間葉細胞で強く発現している遺伝子群を同定した。これら遺伝子群をさらなるスクリーニングを行うため、E11, E13およびE14歯胚と同時期の胎仔全体のtotal RNAを抽出し、マイクロアレイ法を行い、この結果に候補遺伝子を重ねることで、スクリーニングを行った。これらスクリーニングの結果、歯の発生初期に強く発現し、陥入上皮直下にある間葉細胞に特異的に発現するいくつかの候補遺伝子を同定した。これら遺伝子の歯原性間葉細胞における機能を解析するため、それぞれの発現ベクターを作製し、歯原性間葉細胞株に遺伝子導入し検討を行った。幾つかの遺伝子は象牙芽細胞分化マーカーであるDSPPを誘導することが可能であった。また、細胞凝集能の検討を行ったところ、歯原性上皮細胞と共培養することで細胞凝集を引き起こす幾つかの遺伝子を同定した。これら遺伝子は歯の発生初期の間葉細胞の凝集に重要である可能性が考えられ、歯の再生へ向けた、さらなる検討を行っている。
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Scientific Reports
巻: 27 ページ: 45181
10.1038